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第196話「文字を覚えた子ども」
夕方。
橋市。
老人の小屋。
子どもが一人。
走って帰ってきた。
八歳。
女の子。
息が上がっている。
「じいさま」
「父ちゃんに見せたら」
「読んだ」
老人は顔を上げる。
「何を読んだ」
「山って字」
「川って字」
女の子の目が輝く。
老人は少し笑った。
外。
夕日。
川。
橋。
市の喧騒。
以前ならこの子は。
文字を知らないまま育った。
算も知らないまま。
ただ畑を耕した。
それが悪いわけじゃない。
でも。
知ることが出来る。
それだけで。
未来が変わる。
女の子はまた地面に文字を書く。
ゆっくり。
ぎこちなく。
でも。
確かに。
山。
老人は黙って見ていた。
橋市の夕暮れ。
越後に。
小さな灯が。
また一つ増えた。
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