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第189話 橋市の夏
朝。
橋市。
夏が近づいていた。
橋の上を吹く風は少し暖かい。
川面が光る。
荷馬が渡る。
商人が声を上げる。
職人が木を削る。
子どもが走る。
以前なら。
考えられなかった景色だった。
橋番の弥助。
六十一歳。
橋の端に座る。
今日も橋を見る。
木を見る。
人を見る。
異常はない。
それだけで良い。
若い兵。
十九歳。
隣に立つ。
「人が増えましたな」
弥助は頷く。
橋の向こう。
また新しい家が建っている。
小さな家。
粗末な家。
だが。
住む者がいる。
暮らす者がいる。
弥助は橋を見た。
橋を作った時。
ここまで大きくなるとは思わなかった。
川は変わらない。
だが。
人は変わる。
暮らしは変わる。
橋の上を。
今日も人が渡っていた。
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