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第184話 橋市の夜
夜。
橋市。
灯が並ぶ。
飯屋。
宿。
布屋。
桶屋。
橋の近くには人がいる。
笑い声。
湯気。
酒の匂い。
去年には無かった景色だった。
庄蔵。
四十二歳。
役所を閉める。
今日の橋税。
帳面へ記す。
銀貨は多くない。
だが。
確かに増えている。
外へ出る。
橋を見る。
灯に照らされた橋。
その向こう。
まだ暗い村々。
だが。
荷は届く。
薬も届く。
塩も届く。
橋があるから。
庄蔵は橋を見上げた。
少し前まで。
ただの川だった。
今は違う。
橋があり。
町があり。
人がいる。
子どもたちの笑い声が聞こえる。
宿から旅人の声が聞こえる。
庄蔵は小さく息を吐いた。
「まだ始まりだな」
誰も聞いていない。
だが。
その言葉は本当だった。
橋市はまだ小さい。
越後もまだ小さい。
それでも。
確かに育っていた。
灯が川面に映る。
橋市の夜は。
去年よりずっと明るかった。
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