175/288
第175話 氏康三十七歳、帳面を見る
小田原。
夜。
北条氏康。
三十七歳。
静かな部屋。
机の上には帳面。
兵糧。
税。
村。
町。
数字が並んでいる。
家臣が報を読む。
橋市。
役所設置。
人口増加。
税未実施。
氏康は少し眉を動かした。
「税を取らぬか」
ぽつり。
家臣が頷く。
普通なら。
すぐ取る。
町が出来れば金を取る。
それが当たり前だった。
だが。
越後は違う。
氏康は少し笑った。
「欲張らんな」
短い声。
それが良いか悪いか。
まだ分からない。
だが。
急いで実を取らない。
その姿勢は嫌いではなかった。
氏康は窓を見る。
遠い北。
十三歳の少年。
あの少年は。
どこまで先を見ているのだろう。
少しだけ興味が増していた。
(次話へ)




