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第173話 橋市役人
朝。
橋市。
空は晴れていた。
春の終わり。
人の数は、また増えている。
商人。
旅人。
職人。
農民。
橋を渡る者。
橋を目指す者。
皆が行き交う。
今日。
新しい役人が着任した。
名は庄蔵。
四十二歳。
元は倉番だった。
帳面に強い。
字も綺麗だった。
橋市の中央。
小さな建物。
役所と呼ぶには粗末だ。
だが。
確かに役所だった。
庄蔵は帳面を開く。
店の数。
荷の数。
人の数。
全部書く。
若い兵。
十九歳。
不思議そうに見ていた。
「そんな物まで書くんですか」
庄蔵は頷く。
「今は小さい」
短い声。
「だから書く」
兵は首を傾げる。
庄蔵は筆を動かした。
町は突然大きくならない。
毎日の積み重ねで育つ。
だから。
毎日残す。
橋市はまた一歩。
町らしくなっていた。
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