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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第172話 灯の増えた夜

夜。


橋市。


風は穏やかだった。


橋の近く。


灯が並ぶ。


飯屋。


布屋。


桶屋。


小さな宿。


一つ。


また一つ。


灯が増えている。


老人。


六十七歳。


山村から来ていた。


荷を売った帰りだった。


橋の上で立ち止まる。


灯を見る。


昔は暗かった。


川の音だけ。


風の音だけ。


今は違う。


笑い声。


湯気。


灯。


人の暮らしがある。


老人の隣に。


孫。


七歳。


橋を見ている。


「きれいだな」


小さな声。


老人は頷く。


去年なら。


見られなかった景色だ。


橋が出来た。


市が出来た。


井戸が出来た。


人が増えた。


そして。


夜に灯がともる。


老人は橋の向こうを見る。


遠く。


越後の城は見えない。


兼継の顔も知らない。


だが。


確かに思った。


この国は。


まだ大きくなる。


灯が揺れる。


川が流れる。


橋市の夜は。


去年よりずっと暖かかった。


(次話へ)


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