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第165話 井戸の水
朝。
越後。
橋市。
井戸掘りは続いていた。
土。
石。
汗。
職人たちの荒い息。
人が増えれば。
水が要る。
飯を作るにも。
馬に飲ませるにも。
暮らすにも。
必要だった。
兼継。
十三歳。
井戸の脇に立っていた。
職人頭。
五十二歳。
鍬を肩に担ぐ。
顔は土だらけだった。
「もう少しですな」
兼継は頷く。
やがて。
下から声が上がる。
「水だ!」
人が集まる。
桶が降ろされる。
そして。
冷たい水が上がった。
透き通っている。
派手な歓声はない。
だが。
皆の顔が少し緩んだ。
職人頭が笑う。
「これで橋市も長持ちする」
兼継は井戸を見る。
橋。
市。
井戸。
一つ終わるたび。
また次が生まれる。
国とは。
そういうものなのかもしれなかった。
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