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第156話 種の芽
山村。
朝。
畑。
春の風。
湿った土。
老人。
六十七歳。
いつものように畑へ来た。
若者。
二十一歳。
後ろから歩いてくる。
子ども。
七歳。
眠そうな顔でついてくる。
そして。
老人の足が止まった。
土。
その上。
小さな緑。
芽だった。
ほんの少し。
指ほどの大きさもない。
だが。
確かに芽だった。
老人はしゃがみ込む。
荒れた指。
震える手。
若者も覗き込む。
子どもは何が凄いのか分からない。
だが。
老人の顔を見て黙った。
去年。
この村は冬を越える事で精一杯だった。
今年は違う。
種を蒔いた。
芽が出た。
秋を待てる。
来年を考えられる。
老人は小さく笑った。
皺だらけの顔だった。
「育つな」
誰に言うでもない。
だが。
確かに嬉しそうだった。
春風が吹く。
小さな芽が揺れる。
越後と同じように。
少しずつ。
確実に育ち始めていた。
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