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第148話 春の種
山村。
夜。
囲炉裏。
火が揺れていた。
味噌の香り。
湯気。
今日。
村には新しい荷が届いていた。
種だった。
野菜の種。
僅かな量。
だが。
去年には無かった物だった。
老人は六十七歳。
荒れた手で種を見る。
若者は二十一歳。
興味深そうに覗く。
子どもは七歳。
何も分からず見ている。
女が笑う。
「増えるかな」
老人は種を手に取った。
軽い。
小さい。
だが。
重かった。
去年は。
生きる事だけで精一杯だった。
今は違う。
来年を考えている。
春を考えている。
収穫を考えている。
老人は囲炉裏を見る。
そして。
小さく言った。
「良い国になってきた」
誰も返事をしない。
だが。
誰も否定もしなかった。
火が揺れる。
春はまだ途中。
国もまだ途中。
それでも。
確かに前へ進んでいた。
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