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第146話 橋番の老人
昼。
越後。
橋。
今日から橋番が置かれていた。
任されたのは六十一歳の老人だった。
名は弥助。
若い頃は兵だった。
傷だらけの手。
曲がった指。
白くなった髪。
橋の端に座る。
荷を数える。
木を叩く。
縄を見る。
地味な仕事だった。
若い兵が笑う。
「退屈そうですな」
弥助は鼻を鳴らした。
「馬鹿者」
短い声。
「橋は人を生かす」
兵が黙る。
弥助は木を撫でた。
戦なら知っている。
人は死ぬ。
だが。
橋は逆だ。
人を運ぶ。
飯を運ぶ。
薬を運ぶ。
だから。
守る価値がある。
夕方。
兼継が橋へ来た。
十三歳。
だが。
弥助は立ち上がる。
自然と背筋が伸びる。
兼継は橋を見る。
弥助を見る。
そして。
一言だけ言った。
「頼む」
それだけだった。
だが。
弥助は深く頭を下げた。
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