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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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142/288

第142話 旅人の話

関東。


街道。


昼。


旅人たちが茶屋で休んでいた。


囲炉裏。


湯気。


濡れた草履。


誰かが越後の話をする。


最近は珍しくなかった。


「橋見たぞ」


男が言う。


商人が顔を上げる。


「どうだった」


「普通の橋だ」


少し笑い。


だが。


続く言葉が違った。


「普通に使われてた」


沈黙。


戦国では。


それが難しい。


盗賊。


洪水。


戦。


少しで止まる。


だが。


越後の橋は動いていた。


荷が渡る。


人が渡る。


暮らしが渡る。


老人商人が茶を啜る。


「結局、そういう国が残るんだろうな」


誰も否定しなかった。


囲炉裏の火が小さく鳴る。


越後という名は。


少しずつ街道へ広がっていた。


(次話へ)


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