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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第140話 春の笑い声

山村。


夜。


囲炉裏。


火が静かに揺れる。


味噌の香り。


少し増えた塩。


少し増えた具。


豪華ではない。


だが。


去年とは違う。


子どもたちが笑っていた。


囲炉裏の周りを走ろうとして怒られる。


女が苦笑する。


若者が笑う。


老人が火を見る。


その光景を見ていた。


去年は。


静かだった。


皆。


生きる事で精一杯だった。


笑う余裕は少なかった。


だが。


今は違う。


子どもが笑う。


飯の話をする。


春の話をする。


未来の話をする。


老人は火へ薪を入れた。


ぱちり。


小さな音。


「良いな」


誰へともなく呟く。


女が聞き返す。


老人は首を振った。


何でもない。


そう言う代わりに。


火を見る。


子どもの笑い声。


味噌の匂い。


暖かい空気。


それだけで十分だった。


去年には無かった夜が。


そこにあった。


(次話へ)


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