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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第139話 越後という名

小田原。


夕方。


空は赤く染まり始めていた。


北条氏康は庭を歩く。


静かな時間。


家臣が報を持ってくる。


また越後だった。


最近は。


そればかりだ。


橋。


荷。


村。


病。


兵の数ではない。


だが。


紙を閉じる氏康の顔は重い。


「越後という名が増えましたな」


家臣が言う。


氏康は少しだけ頷く。


戦で有名になる国は多い。


勝利で名が広がる国も多い。


だが。


最近の越後は違う。


暮らしで名が広がる。


それが厄介だった。


人は勝者に憧れる。


だが。


住みやすい場所へ集まる。


氏康は空を見る。


赤い空。


遠い北。


まだ見えぬ国。


「……続くな」


ぽつり。


誰へともなく言った。


風だけが返事をした。


(次話へ)


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