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第136話 春の布団
山村。
夜。
囲炉裏。
火が静かに鳴る。
味噌の香り。
湯気。
子どもが眠そうにしていた。
その肩には。
新しい布が掛かっている。
粗い布。
高価ではない。
町では当たり前かもしれない。
だが。
この村では違う。
女が布を直す。
子どもは、そのまま眠ってしまった。
老人が火を見る。
長い沈黙。
若者が言う。
「橋って凄いな」
少し照れた声。
老人が笑う。
「橋だけじゃねえ」
短い言葉。
「橋を作ろうと思った奴がいる」
火が揺れる。
ぱちり。
小さな音。
去年なら。
布より薪だった。
布より飯だった。
生きるだけで精一杯だった。
だが。
今は少し違う。
子どもは布に包まれて眠る。
囲炉裏には湯気がある。
外はまだ寒い。
それでも。
家の中には。
静かな温かさがあった。
老人は眠る子どもを見る。
そして。
誰にも聞こえないほど小さな声で言った。
「……生き延びたな」
火だけが静かに揺れていた。
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