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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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135/288

第135話 武ではなく

小田原。


昼。


北条氏康は庭を歩いていた。


風が吹く。


若葉が揺れる。


家臣が後ろにつく。


「越後、また村が安定したようで」


短い報。


氏康は歩みを止めない。


砂利が鳴る。


「戦は」


家臣が続ける。


「ありません」


氏康は少し笑った。


「だから厄介だ」


家臣は黙る。


戦なら分かる。


勝つ。


負ける。


死ぬ。


終わる。


だが。


今の越後は違う。


武ではなく。


暮らしで積んでいる。


民が残る。


兵が残る。


金が残る。


それは。


時間が経つほど強くなる。


氏康は空を見る。


曇り空。


遠い北。


まだ小さい火。


だが。


消える気配がない。


「見ておけ」


ぽつり。


短い声。


「まだ続くぞ」


風だけが返事をした。


(次話へ)


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