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第132話 新しい布
山村。
夜。
囲炉裏。
火が揺れる。
味噌の香り。
湯気。
子どもたちの小さな声。
今日は。
ひとつ違う物があった。
布。
新しい布だった。
決して上等ではない。
粗い。
硬い。
だが。
新しい。
女が指で撫でる。
老人も触る。
若者が少し照れたように笑う。
「荷に入ってた」
短い声。
囲炉裏の周りが静かになる。
去年なら。
考えなかった。
穴の空いた物を重ねる。
擦り切れるまで使う。
それが当たり前だった。
子どもが布を抱える。
嬉しそうだった。
女が少し笑う。
老人は火を見る。
長い沈黙。
そして。
ぽつりと言った。
「暮らしになってきたな」
誰も返事をしない。
だが。
皆、分かっていた。
橋は薬だけではない。
塩だけでもない。
少しずつ。
人らしい暮らしを運んでくる。
外では風。
まだ寒い。
それでも。
囲炉裏の前には。
去年には無かった温かさがあった。
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