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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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131/288

第131話 遠い北

小田原。


夜。


庭。


静かな風。


北条氏康は縁側に座っていた。


灯は部屋の奥。


外は暗い。


遠くで虫が鳴く。


家臣が報を持ってくる。


越後。


また越後。


最近はそればかりだった。


橋。


荷。


村。


病。


どれも小さい。


どれも地味だ。


だが。


消えない。


氏康は紙を閉じる。


静かな音。


「まだ戦をしないのですか」


家臣が聞く。


氏康は少し空を見る。


曇り空。


星は見えない。


「急ぐな」


短い声。


「焦る相手ではない」


焦って壊せる相手ではない。


そう思っていた。


遠い北。


寒い土地。


貧しい土地。


それでも。


少しずつ積んでいる。


氏康は長く息を吐いた。


戦国。


刀だけでは勝てぬ。


そんな時代が来るのかもしれなかった。


(次話へ)


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