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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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129/288

第129話 橋の先

朝。


越後。


橋には朝露が残っていた。


濡れた木板。


冷たい風。


川の流れ。


完成したはずの橋。


だが。


人の手は止まらない。


縄を締める。


杭を打つ。


傷んだ場所を確かめる。


橋は作って終わりではない。


守らねばならない。


兼継は橋の端に立っていた。


荷馬が渡る。


軋む音。


馬の鼻息。


商人たちの緊張した顔。


橋は静かに耐えていた。


向こう岸では。


村人が待っている。


薬を。


塩を。


荷を。


若い兵が橋を見ながら言った。


「終わったと思ってた」


隣の老人が笑う。


「始まりだ」


短い声。


兵は少し黙る。


そして橋を見る。


確かにそうだった。


荷が通る。


人が通る。


道が伸びる。


橋は完成した。


だが。


暮らしは今から流れ始める。


兼継は遠くを見る。


まだ足りない。


橋一本で国は変わらぬ。


だから。


また積む。


ただ、それだけだった。


(次話へ)


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