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第128話 少し先の話
山村。
夜。
囲炉裏。
味噌の香り。
少し塩気の増えた汁。
火が、ぱちりと鳴る。
子どもが椀を抱えている。
去年より少し赤い頬。
女が鍋を混ぜる。
若者が戻った。
泥の付いた足袋。
疲れた肩。
だが。
今日は少しだけ口元が軽かった。
「次、布も来るらしい」
女が顔を上げる。
老人が目を細める。
「布か」
去年なら。
穴の空いた物を重ねた。
寒さを耐えた。
それが普通だった。
だが。
今は違う。
橋がある。
荷が来る。
少しずつ。
暮らしが届く。
子どもが眠そうに言った。
「春になったら、魚いっぱい食べれる?」
少し笑い。
女が頭を撫でる。
老人が火を見る。
長い沈黙。
そして。
小さく言った。
「……そうなるよう、生きる」
外は寒い。
春もまだ遠い。
だが。
囲炉裏の前には。
少し先の話が座るようになっていた。
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