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第127話 眠れぬ算盤
小田原。
夜。
灯が揺れている。
算盤。
紙。
静かな部屋。
北条氏康は珠を弾いていた。
乾いた音。
兵糧。
税。
荷。
道。
人。
数字は嘘をつかない。
家臣が言う。
「橋一本で変わりますか」
氏康は手を止めない。
珠が鳴る。
乾いた音。
「一本ではない」
低い声。
「積んでいる」
橋。
堤。
倉。
道。
病。
全部、小さい。
だが。
毎日。
止まらぬ。
それが嫌だった。
寒国。
小国。
本来なら削れる。
だが。
最近の越後は違う。
珠が止まる。
氏康は窓を見る。
夜風。
遠い犬の声。
「民が残る国は折れぬ」
ぽつり。
誰へともなく言った。
そして。
また珠が鳴る。
乾いた音が、夜へ溶けていった。
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