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第125話 橋を渡る朝
朝。
越後。
薄い霧。
橋には、朝露が残っていた。
濡れた木。
冷たい風。
川音。
昨日まで。
作る場所だった。
だが。
今日は違う。
渡る場所になっていた。
荷馬が進む。
軋む車輪。
縄の擦れる音。
兵が橋端を見ている。
村人が木を確かめる。
若い男が息を吐いた。
「……本当に渡ってる」
隣の老人が笑う。
「壊れねえよう見ろ」
短い言葉。
だが。
声には少し軽さがあった。
兼継が橋を歩く。
裾には泥。
目の下に薄い疲れ。
それでも。
視線は止まらない。
木。
縄。
流れ。
荷。
人。
全部を見る。
橋は完成ではない。
使いながら守る。
守りながら直す。
国も同じだった。
橋の中央。
兼継が立つ。
下では春水が流れている。
奪う水。
壊す水。
だが。
今日は負けていない。
商人が頭を下げた。
「助かります」
兼継は少しだけ視線を向ける。
そして。
短く言った。
「届けば良い」
それだけ。
橋の向こう。
荷車が、また進んでいた。
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