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第124話 橋の向こうの夜
山村。
夜。
囲炉裏。
火が鳴っていた。
味噌の匂い。
塩気が少し増えた汁。
去年より少し多い飯。
女が鍋を混ぜる。
子どもが椀を抱える。
若者が戻ってきた。
疲れた顔。
泥の残る足袋。
だが。
今日は少しだけ笑っていた。
「届いた」
短い言葉。
老人が顔を上げる。
「薬も」
「塩も」
「魚も少し」
囲炉裏の空気が止まる。
去年なら。
考えなかった。
届かぬ前提だった。
老人が火を見る。
長い沈黙。
そして。
ぽつり。
「……生き延びるな」
短い声。
女の目が少し潤む。
だが。
泣かない。
火が鳴る。
外は寒い。
まだ春は浅い。
それでも。
囲炉裏の前だけは。
少し未来が近かった。
子どもが言う。
「また、おかわりある?」
誰かが小さく笑った。
囲炉裏の火が。
静かに揺れていた。
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