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第123話 氏康の沈黙
小田原。
夜。
灯が揺れる。
北条氏康は紙を見ていた。
橋、完成。
荷、移動開始。
村、安堵。
短い文字。
短い報。
だが。
重い。
家臣が言う。
「橋一本です」
「恐れるほどでは」
氏康は答えない。
外を見る。
風。
庭。
静かな夜。
やがて。
小さく言った。
「橋ではない」
家臣が顔を上げる。
氏康は紙を置いた。
「続けた事が厄介だ」
橋。
倉。
堤。
荷。
病。
ひとつではない。
積んでいる。
毎日。
静かに。
それが嫌だった。
戦場なら分かる。
刀は折れる。
兵も死ぬ。
だが。
暮らしは違う。
積めば積むほど崩れにくい。
氏康は長く息を吐いた。
「……まだ小さい」
ぽつり。
だが。
消えて欲しい火ほど。
消えないものだった。
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