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第119話 氏康の静けさ
小田原。
夜。
庭が静かだった。
灯が揺れる。
紙が積まれている。
越後。
また越後。
橋。
倉。
病。
荷。
暮らし。
戦ではない。
だが。
嫌な報ばかりだった。
氏康は紙を閉じる。
乾いた音。
家臣が言う。
「小国です」
「雪国です」
「いずれ削れます」
沈黙。
氏康は、少し外を見る。
夜風。
揺れる木。
遠い犬の声。
「……だと良いな」
ぽつり。
短い声。
戦だけの者は折れる。
だが。
暮らしを積む者は違う。
時間が味方する。
腹が味方する。
民が離れぬ。
それが厄介だった。
氏康は小さく息を吐いた。
越後。
まだ弱い。
まだ小さい。
それでも。
嫌な静けさがあった。
消えぬ火。
そんな相手だった。
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