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第118話 茶屋の沈黙
関東。
街道沿いの茶屋。
昼。
囲炉裏。
湯気。
濡れた草履。
旅人たちの疲れた背。
誰かが酒を置く。
「越後、橋ほぼ出来るらしい」
小さな沈黙。
誰もすぐ返さない。
やがて。
商人が言う。
「早えな」
別の男が鼻を鳴らす。
「魔王が橋作ってる国か」
少し笑い。
だが。
長く続かない。
老人商人が茶を置く。
「怖えよ」
短い声。
皆が顔を向ける。
「戦する国より」
「住める国の方が怖え」
静かな声。
囲炉裏が小さく鳴る。
戦国では。
逃げる民は珍しくない。
腹が減る。
病が出る。
冬で削れる。
それが普通だった。
だが。
もし。
逃げなくていい国が出来たら。
もし。
少し飯がある国が出来たら。
人は残る。
兵も残る。
酒の匂い。
雨の湿気。
誰かがぽつりと言った。
「……嫌な時代来るかもな」
誰も笑わなかった。
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