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第117話 橋の影
朝。
越後。
空は曇り。
川から冷たい風が上がっていた。
橋場。
湿った木。
縄。
泥に沈む足。
橋は。
もう川の半ばを越えていた。
まだ未完成。
だが。
形になり始めている。
男たちが木を運ぶ。
肩に食い込む重さ。
汗。
泥。
誰かが息を吐く。
若い兵が橋を見上げた。
「……出来るんだな」
隣で縄を結ぶ老人が、小さく笑う。
「出来るまでやるんだ」
短い言葉。
兼継は橋の先に立っていた。
風が裾を揺らす。
指先には墨。
泥も乾いていない。
「そこを締めろ」
短い声。
皆が動く。
最近は。
声より先に体が動く。
怒鳴られぬ。
威張られぬ。
だが。
止まれば届かぬ。
それを知っていた。
川の向こう。
まだ遠い村がある。
橋が出来れば。
薬が届く。
塩が届く。
人が少し生き延びる。
兼継は流れを見る。
強い。
だが。
橋の影も。
少しずつ長くなっていた。
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