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第115話 積まれる紙
夜。
小田原。
灯が揺れていた。
北条氏康の前に、紙が積まれる。
橋。
道。
荷。
病。
倉。
兵の数ではない。
暮らしの数だった。
家臣が口を開く。
「放っておけば疲弊するかと」
氏康は、すぐ答えない。
指先で紙を揃える。
乾いた音。
「……どうかな」
低い声。
「普通ならそうだ」
寒国。
遠国。
雪。
削れる条件は多い。
だが。
最近の越後は。
削れながら積んでいる。
それが嫌だった。
戦場なら分かる。
勝つ。
負ける。
折れる。
終わる。
だが。
暮らしは違う。
静かに。
少しずつ。
積もる。
氏康は窓を見る。
遠い北。
見えぬ越後。
「火が消えぬな」
ぽつり。
誰へともなく呟いた。
灯が小さく揺れていた。
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