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第110話 眠らぬ灯
夜。
越後。
城。
灯が静かに揺れていた。
外では風。
障子が、かすかに鳴る。
兼継の前には帳面。
紙。
墨。
乾ききらぬ指。
北村。
病、減少。
山村。
荷、到着。
橋場。
補強、続行。
短い文字。
短い報。
だが。
どれも人の暮らしだった。
家臣が膝を進める。
「お休みを」
兼継は顔を上げない。
「明日で良い」
短い声。
家臣は黙る。
明日も同じ事を言う。
そして。
同じ答えが返る。
皆、分かっていた。
兼継は止まらない。
誰より先に現場へ行く。
誰より遅くまで帳面を見る。
怒鳴らぬ。
威張らぬ。
だが。
その灯だけは消えない。
兼継は、少し墨を足した。
戦なら。
勝てば終わる。
だが。
暮らしは終わらぬ。
腹は減る。
病は来る。
雪も来る。
だから。
止まれぬ。
灯が揺れる。
外は寒い。
それでも。
小さな火は、まだ消えていなかった。
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