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第11話「策と策」

戦は、まだ起きていない。


だが。


すでに始まっている。


――


甲斐。


武田の本陣。


---


「……報は」


---


低い声。


---


「上杉、動きなし」


---


短い返答。


---


「……動かぬか」


---


武田信玄は、わずかに目を細める。


---


動かない。


それが、逆に異常だった。


---


「これまでの上杉ならば」


---


側近が言葉を選ぶ。


---


「すでに仕掛けてくるはずかと」


---


「そうだな」


---


信玄は、否定しない。


---


「……だが」


---


間。


---


「それを待っている」


---


理解している。


---


こちらの出方を、見ている。


---


「ならば」


---


わずかに、口元が動く。


---


「こちらから動く」


---


---


越後。


---


上杉兼継は、座していた。


---


動かない。


---


だが。


---


すべては、動いている。


---


「……来るな」


---


誰に言うでもなく、呟く。


---


---


「はい。武田、進軍準備」


---


報告は、すでに届いている。


---


「速度は抑えられております」


---


「当然だ」


---


兼継は、視線を動かさない。


---


「前回で学んだ」


---


それが、武田信玄。


---


---


「……では、いかが致しますか」


---


問い。


---


---


「何もしない」


---


---


間。


---


---


「……何も」


---


---


「そうだ」


---


---


静かな答え。


---


---


「動けば、読まれる」


---


---


「ならば、動かない」


---


---


それだけ。


---


---


「だが」


---


---


続く言葉で、意味が変わる。


---


---


「“動いているように見せる”」


---


---


家臣が、息を呑む。


---


---


「影を作れ」


---


---


「偽の軍」


---


---


「偽の補給」


---


---


「偽の進軍」


---


---


それらを、各地にばらまく。


---


---


「どれが本物か、分からなくする」


---


---


武田に、選ばせる。


---


---


間違わせる。


---


---


---


数日後。


---


武田軍は、進んでいた。


---


だが。


---


「……多いな」


---


信玄が、呟く。


---


報が、多すぎる。


---


「北で動き」


「南で補給」


「西で集結」


---


どれも、それらしい。


---


「……本物は、どれだ」


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誰も、答えられない。


---


---


「……分からぬ」


---


だが。


---


止まらない。


---


「進む」


---


決断。


---


だが、その瞬間。


---


選ばされた。


---


---


進軍路が、定まる。


---


それは。


---


兼継が望んだ“唯一の道”。


---


---


越後。


---


「……そこか」


---


兼継が、地図を見て呟く。


---


---


「はい。武田、本線確定」


---


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「遅い」


---


---


それだけ。


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「準備は」


---


---


「完了しております」


---


---


「火輪銃は」


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---


「百五十、配置済み」


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完璧。


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---


「……では」


---


---


わずかな間。


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---


「終わらせる」


---


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その一言で。


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戦は、終わる。


---


まだ始まっていないのに。


---


---


山間。


---


武田軍が進む。


---


隊列は整っている。


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警戒もしている。


---


前回とは違う。


---


---


「……来るなら来い」


---


信玄は、前を見据える。


---


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だが。


---


来ない。


---


---


静かすぎる。


---


---


「……何もない?」


---


側近が呟く。


---


---


その瞬間。


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音。


---


---


乾いた発砲。


---


---


一発。


---


---


将が、倒れる。


---


---


二発。


---


伝令が消える。


---


---


三発。


---


旗が落ちる。


---


---


「……来たか」


---


信玄の目が細まる。


---


---


だが。


---


今度は違う。


---


---


「散開!」


---


即座に命令。


---


兵が動く。


---


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それでも。


---


止まらない。


---


---


撃たれる。


---


崩れる。


---


---


だが。


---


完全ではない。


---


---


武田は、耐えている。


---


---


「前へ出ろ!」


---


信玄が叫ぶ。


---


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距離を詰める。


---


火輪銃の有効範囲を、潰すために。


---


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それは、正しい。


---


---


だが。


---


---


「……遅い」


---


---


遠く。


---


兼継が、呟く。


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---


すでに。


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次の段階に入っている。


---


---


伏兵。


---


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左右から、崩す。


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分断。


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混乱。


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「……なるほど」


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---


信玄は、理解する。


---


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「二重か」


---


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火輪銃で崩し。


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その後に、本命。


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「……やるな」


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初めて。


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笑う。


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だが。


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---


崩れる。


---


---


武田軍も。


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---


完全ではない。


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だが。


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確実に、削られていく。


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戦は、終盤。


---


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そして。


---


---


兼継は、言う。


---


---


「……ここまでか」


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---


評価。


---


---


「次だ」


---


---


戦は終わる。


---


---


だが。


---


---


勝負は、まだ続く。


---


---


魔王と。


---


対抗者。


---


---


その戦は。


---


ここからが、本番だった。


---


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