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第105話 朝露の橋
朝。
越後。
川霧が、低く流れていた。
橋。
まだ完成ではない。
濡れた木。
泥。
縄。
踏み固められた土。
男たちの足跡が、幾重にも残っている。
朝露で湿った木材を、兵が肩へ担ぐ。
村人が縄を引く。
息は白くない。
だが。
春にはまだ遠い寒さがあった。
兼継は橋の端に立つ。
裾には乾き切らぬ泥。
指先には墨。
昨夜の帳面の名残だった。
「そこ、締め直せ」
短い声。
男たちが動く。
誰も返事を急がない。
ただ。
先に手が動く。
若い兵が、小さく息を吐く。
「また寝てねえ顔だな……」
隣の老人が鼻を鳴らす。
「寝てても動くぞ、あの方」
少しだけ笑い。
すぐまた手が動く。
橋が出来れば。
荷が通る。
病が少し遠くなる。
冬が少し軽くなる。
それを。
皆、もう知っていた。
川が流れる。
冷たい音。
兼継は、橋の先を見ていた。
まだ足りない。
だが。
少しずつ形になっている。
国も。
同じだった。
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