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第103話 関東の違和感
関東。
昼。
市。
土の匂い。
獣の匂い。
汗。
干し魚。
味噌。
酒。
怒鳴り声。
笑い声。
荷車が軋みながら進む。
空は曇り。
春とはいえ、まだ風は冷たい。
商人たちは、荷を見ていた。
縄。
俵。
塩。
布。
積み上がる物。
減る物。
動く物。
その中で。
ひとりの商人が眉を寄せる。
「……最近、越後が妙だ」
茶を啜っていた男が顔を上げた。
「また魔王か」
小さな笑い。
だが。
最初の男は笑わない。
「荷が切れねえ」
沈黙。
隣の男が眉を動かした。
「寒国だろ」
「冬越えたら減るはずだ」
「道も悪い」
「雪も深い」
皆、知っている。
越後は豊かではない。
寒い。
遠い。
痩せた土地。
本来なら。
削れていく国だ。
だが。
最近。
荷が届く。
塩が流れる。
薬が動く。
少ないながらも。
止まらない。
誰かが鼻を鳴らした。
「橋だろ」
「最近、橋作ってるって話だ」
「堤も」
「倉もだ」
笑う者はいない。
物は嘘をつかない。
兵は盛れる。
武勇は飾れる。
だが。
荷は嘘をつかぬ。
届く国。
止まらぬ国。
飢えぬ国。
それは。
静かに強い。
酒を置いた男が、ぽつりと言った。
「……嫌な国になりそうだな」
冗談みたいな声。
だが。
誰も否定しなかった。
遠い北。
越後。
まだ小さい。
だが。
確かに何かが積み上がっていた。
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