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ミューゼ~運命の旋律~音楽の街の落ちこぼれ少女が、音楽に選ばれた戦士【ミューゼ】として戦うことになりました。  作者: 天近嘉人
第一楽章【アリアの運命】

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音楽の戦士 ミューゼ

 「…………ギ、ギィイイイ…………!」


 

 アリアが放った一撃により、ヌルの胸に空いた穴を中心に大きな亀裂が走った。


 小さく絶叫するノイズ音と共に、ヌルは地に伏せる。


 幾千もの黒い腕も同時に倒れ、大きな音がアリアの背後で響き渡った。


 

 「……はぁ…………はぁ…………や、やったの?」


 形が戻った指揮棒を握りしめ、胸に手を当てるアリア。


 そして恐る恐る(きびす)を返し、倒れた音がする後ろへと振り返る。




  ――すると。






 「わぁ……!」



 アリアの目の前には数え切れない程の小さな光の音符があった。


 雪のように小さなソレは優しく光りながら、ゆらゆらとゆっくり天へと昇っていく。


 時折音符同士でぶつかると、優しくて何処か儚い鉄琴のような音を奏でた。


 それが幾回も重なって、まるで一つの演奏になって。


 ゆっくり、ゆっくりと昇っていく。


 

 「…………」



 そんな音符達をアリアはただ眺めている。


 

 そして、空へ昇った小さな光は、段々と一つになって。



 大きな光は、灰色の世界を優しく包み込んで。




 そして――。










 

 

 「………………あれ?」




 気が付くと空は茜色に染まっていた。



 「……私、戻ってこられたの?」



 アリアはゆっくり周りを見渡してみる。


 目に飛び込んできたのはいつもの通学路、いつもの美しい街並み。


 いつも通りのエルハーモニアの景色であった。


 「やった……! 戻ってこられたんだ!」


 アリアは嬉しくなって両手を万歳して飛び跳ねる。


 「わぁい! やったー! 制服も元に戻ってるし、リュックもちゃんとある! それに――!」


 変身も解け、お母さんから怒られる心配も無くなったアリア。


 

 そんなアリアの耳に、ある音が聴こえてきた。



 それは、ピアノの旋律。


 それは、ヴァイオリンの音色。


 それは、教会で歌われる賛美歌。




 それは音楽を愛し、音楽に愛された街、エルハーモニアの日常。




 アリアの大好きな音楽だった。



 「…………ただいま。音楽(きみ)のお陰で、ちゃんと帰って来られたよ」


 アリアはそう呟いた後、街が奏でる音楽に耳を澄ます。


 心の奥でハンドベルを一つ鳴らしたかのような、じんわりとした感情に浸りながら。


 どんな時でもずっと傍にいてくれる、大好きな音楽を聴いていたのだった。





 ――そんな時だった。



 「…………おめでとう、アリア」


 アリアの耳にそんな声と、拍手の音が聞こえてくる。


 アリアが振り返るとそこには、風紀委員の腕章を付けている黒髪丸眼鏡の少女が。


 そして、生徒会長であるヴァルが祝福の拍手をアリアへ送っていた。


 「……ヴァル会長? それに風紀委員さんまで……。なんで此処に?」


 「君は自分の運命に打ち勝ったんだ。大好きな音楽と一緒に。本当によく頑張ったね、アリア」


 小首を傾げるアリアに、ヴァルは優しく微笑んでそう言った。


 アリアの無事と成長を心から祝福している笑みだった。


 「ふぇ!? えぇっと、そんなに褒められても……といいますか、私自身何がどうなってるのかサッパリで……」


 褒められ慣れていないアリアは恥ずかしそうに笑いながら頭を掻く。


 そんな様子を見てヴァルはクスリと笑い、二人のマイペースさに風紀委員は呆れるような顔をしている。


 そんな中。


 「あ、あの! 会長は全部知ってるんですよね!? 教えて下さい! 灰色の世界のこと、黒いお化けのこと……。会長が私に託してくれた指揮棒のことを……!」


 アリアはそう言って深く頭を下げる。


 そしてゆっくりと身体を戻した時、ヴァルの表情からは微笑みが消えていた。


 凛とした佇まいの、威厳のある生徒会長の顔でアリアを見つめていたのだった。


 




 「…………アリア、君は【旋律の運命】によって選ばれたんだ」






 「音楽都市エルハーモニアを音楽の力で護る――」 







  「――音楽の戦士、ミューゼに」

これにて第一章完結になります!ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!


アリアのミューゼモチーフはベートーヴェンの『交響曲第5番 ハ短調 作品67』、通称『運命』でした!


アリアの衣装だったり、第5話、『運命は、かく扉を叩く』の『扉』が登場するシーン。この曲からインスピレーションを受けています。

また、戦闘中の何度も同じ言葉を繰り返すシーンも、一番有名な『ジャジャジャジャーン』を意識していたりもします。読者様の脳内で『運命』を戦闘BGMにアレンジして再読してみると、また違った面白さがあるかもしれません笑


晩年、難聴に悩まされたベートーヴェンの苦悩や葛藤。そして、それらを乗り越えた先にある歓喜を曲で表したとネットでは書いてありました。


音楽が大好きなのに、音楽の才能が全くないアリア。そんな運命をアリアは乗り越えられるのでしょうか。次章からは新キャラや新たな展開が続々登場します。


本格的に物語が動く第二楽章、是非楽しく読んで下さい。

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