白鳥の独舞
エルハーモニア学園、舞踏稽古場。
窓から差し込む月光のみが、照明が落ちているこの部屋を照らしている。
磨かれた床に月光が反射し、まるで風情ある湖面のように淡く輝きを放っていた。
そんな部屋の中で、一つの音が響き渡る。
コツ、コツという床を叩いたような、品の良い音。
バレエダンサーの象徴、トゥーシューズが床を叩く音。
少女が暗闇のステージで独り踊っている音であった。
月光のような淡い金髪。
水滴が滴りそうな程の長いまつ毛。
バレエの練習着が際立たせる細くしなやかな体躯。
その姿はまるで、美という概念は彼女から生まれたのだと思わせる程、少女の容姿は美しかった。
――そして何より、少女の踊りはそれ以上に美しかった。
頭の中から流れる音楽に合わせて、淡々とした表情で踊る少女。
軽やかな足捌き。
滑らかな腕使い。
長い肢体を真直ぐ伸ばしながら跳躍。
着地。
その後、流れるように回転。
そして、最後に片腕と片足を大きく上げた姿勢で停止。
その様はまさに、湖畔のステージで悠然と翼を広げ降り立った白鳥そのものであった。
――しかし。
「…………違う」
湖面に波紋を作る一滴の雫のように、少女の口からそんな言葉が零れた。
紛うことなき完璧な演技だったにも関わらず、少女は唇を噛み締め悔しがっていた。
「こんなので満足してたら駄目……! もっと美しく、もっと完璧に踊らないと……!」
少女はスタート位置まで戻っていき、バレエの練習で使われる手すりに手を掛けた。
そして正面にある鏡に視線を移し、反射している自分の顔を睨みつけるように見つめる。
――そして。
「――私は、音楽に選ばれたのだから……!」
鏡の中の自分にそう言い放った少女は、呼吸を整えもう一度踊り始める。
観客の居ないステージで、孤独に踊り続ける少女。
彼女の舞踏は相変わらず美しいことに変わりはないが、動きや表情に焦燥感を感じる。
その姿は水面に足を取られ、必死に翼を羽ばたかせる白鳥のようであった。
第二楽章開幕です!
孤独に踊り続ける彼女。これから先アリアとどう絡んでいくのでしょうか?
さて、ここからはお知らせです。
第1話からここまで毎日更新してきた本作ですが、ここからは毎週日曜日の週一更新となります。
今、現在二ヶ月分のストックは用意していますのでエタる心配はないです!
作者自身、連載始めてから創作のモチベーションが更に高まってきているので、連日更新しても問題ない程ストックが溜まってきたら、また更新頻度あげようと思っています。その際はまた皆様に報告しますね!




