第44話 虚構と粛清と
アンドレイは何もない黒い空間に立っていた。
「ここは?」
「我が貴様をここに引き込んだ。わかるだろうアンドレイ?」
「そのお声は……。虚様っ!!」
「……このような場所で言葉を交わすのはやめるとしよう。イマジナリーナンバー22 end正位置<終了宣言>。surfaceの効果を終了させろ」
空間が裂け、鬱蒼とした森が見える。
アンドレイの体は異空間から現実空間に戻り、地面に叩きつけられる。
その様子を虚は冷たい目で見つめる。
「さて、アンドレイ。説明をしてもらおうか」
「……申し訳ございません虚様。いただいたお力の『Weakness』を奪われました」
「――無能だな」
虚の声がアンドレイを貫く。
「も、もう一度。もう一度、機会をいただけませんかっ!! 今度はっ!!」
哀願しながらその足にまとわりつこうとするアンドレイを虚は蹴り飛ばす。
そして1枚のカードを取り出した。
「う、虚様っ! ありがたき幸せでございますっ!! お許しいただけるのですねっ!?」
「……イマジナリーナンバー17 shade逆位置<皮肉めいた賞賛>」
「えっ……?」
虚は緩やかな足取りでアンドレイに近づき、その髪を掴んで引き上げる。
そしてその目を見ながら告げる。
「貴様はたいした奴だ。我が渡したカードをみすみす奪われ、我が助けなければ死んでいた。そして、恥ずかしげも無く我にもう一度チャンスを欲しいと言う。なかなかできることでは無い。我ならば恥ずかしくて舌を噛む」
「……っ!」
「それだけに飽き足らず、この世界で『神』と崇められているものを否定し、我のような者を神として崇める。ただの愚か者としてはよくやったと言える。素晴らしいことだ。――あまつさえ、我にシルヴィア・バルディーニのカードを使わせた」
アンドレイは口をパクパクさせる。
そして驚いたように喉を押さえる。
更に自らの目の前で手を振ったり、耳のあたりを手で叩いたりしている。
「……shadeの効果は『相手に皮肉を言うことで五感を奪う』。もう聞こえていないし、見えてもいない。哀れだな。――さて、不要なものは捨てるか」
そしてもう一枚のカードを虚は取り出す。
「イマジナリーナンバー15alive逆位置<死生反転>対象はアンドレイ・バチカル・インヴァクロス」
アンドレイの体が力なく地面に倒れ伏す。
虚は遺体からこぼれ落ちたSurfaceのカードを拾い上げる。
「終わった? マスター?」
一部始終を木の上で見ていたアイが虚の後ろに飛び降りて問いかける。
虚はそれに答えず歩み出す。
「次のカードを回収に向かうぞ。そろそろ入巣京に預けているカードも返してもらわねばならぬしな」
物言わぬ死骸となったアンドレイの体を踏みつけ、虚はその場を後にした……。




