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第41話 静寂と対峙と

「……おかしいですわね」


 時間は深夜。

 神殿の一角。

 イリアス達はそこに身を潜め、様子をうかがう。


「……お姉様、もしかしてなんですけど」

「何かしら、言ってご覧なさいセラ」

「あの警備の人たち、街で並んでいた人たちみたいに何にも反応をしないみたいですね」

「よく見ていますわねセラ」


 イリアスはセラフィナの頭を撫でる。


「少し試してみても良いですか、お姉様?」

「何をするのかしら?」

「大火槍で死なない程度にこのあたりを暑くしてみます」

「………面白いわね。やってみなさい」

「はいっ!」


 セラフィナは警備の前に姿を出し、大火槍を展開する。

 そして周囲の気温を上げていく。

 イリアスとダリウスから汗が流れ落ちる。

 それは警備の人々ですら例外ではない。


「……汗を拭う様子がありませんわね」

「そもそも、セラフィナとやらが眼前に現れているのに反応すらしていないではないかっ!」

「では、次は私の番でして」


 そう言うとイリアスは聖剣を抜き放ち、手近にいた警備を峰打ちする。

 すると警備は一瞬、イリアスの方を見やると何かを叫ぼうとする。

 しかし、そのまま地面に倒れ伏して動かなくなる。

 その体からは黒い靄が抜け、霧散する。

 体が呼吸に応じて上下していることから、死んではいないようである。


「……おそらくですが、意識はないようですわね。――無理矢理立たされているだけと言ったところですわね」


 イリアスは納刀し、周囲を見やる。

 他の警備は先の蛮行に対して、おびただしい汗を流しているが反応を示さない。


「……少々確かめ方が過激では無いかっ!?」

「この方が手っ取り早いですわ」


 ダリウスが物陰から姿を現す。

 しかし、警備は反応を示さない。


「ダリウスさんが姿を現せば、何らかの反応を示しても良さそうですわ。なにせ、ダリウスさんはここから追放されたお方。知り合いや、ダリウスさんのことを嫌っている方もいるでしょう?」

「……今、お前が倒したのが元側近だっ!」

「あら、それは失礼致しましたわ」


 イリアスはバツが悪そうに頬を掻く。


「お姉様、やっぱり大火槍の魔力が吸われていきます」

「行き先は分かるかしら?」

「奥の方です」

「やはりですのね。ここの警備は念のために縛っておきますが、基本的には無視で良さそうですわね」


 3人は神殿の奥に歩みを進める。

 しばらくすると眼前に豪奢(ごうしゃ)な木製の扉が現れた。


「もし、相手が病気に関する力を持っているとしたら扉に触れるのは危険ですわね。セラ、焼き払いなさい。――すべてが終わったら、ダリウスさんがなんとかするでしょう」

「おいっ!?」


 ダリウスが止めようとするより早く、セラフィナが扉を焼き払う。

 黒焦げになった扉を大火槍の鐺で殴りつけて破壊する。


「おや、本日は少々元気の余っている方がお見えのようですね。まさか扉を焼かれるとは。まあ良いでしょう。そのような些事は。――ようこそ、戒告の間へ」


 にこやかな笑みを浮かべ、修道服を身に纏った男。

 まるで歓迎するかのように、大仰な身振りで3人を迎え入れる。


「本日はいかが致しましたか。何かお悩みのことがありますか。神の名の下にお聞き致しましょう」

「……アンドレイ・バチカル・インヴァクロス最高戒告官っ!」


 ダリウスが絞り出すように呟く。


「貴様を断罪するっ!!」

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