↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/52

第39話 盲信と偽救と

「人は救われなければならない」


 ここは神殿。

 戒告の間。

 その荘厳(そうごん)な空間にはひとりの男。

 あたりには人は無く、空気が澱んでいるように感じられる。

 時刻は夜半を過ぎた頃。

 集めた魔力を、カードに納めて呟いた。


「しかし、人々は自らの悩みを隠してしまう。しかし、虚様はおっしゃられた。『隠したものですら暴き、それを解決すること。それが人を救う道である』と」


 男が持つカードは「Weakness(きょじゃく)」。

 暗闇の中、膝を抱え、鎖でその体が縛られている。

 足下にはどこかから舞い落ちたであろう木の葉が積もり、半ば土と化している。


「虚様にいただいたこの札は素晴らしい。『病』と言う形で人々の中に隠された『魔力』を暴くことができる」


 カードが怪しく光り、漂っていた魔力が吸い込まれる。


「人は無用なものを持つから悩むのです。それならば、無ければよい」


 男はカードを仕舞い、傍らに立つ従者を見やる。

 その従者は表情が無く、まるで人形そのもののようであった。

 音もなく、男に近づく。


「魔力は不要」


 男は従者から外套(コート)を受け取り、羽織る。


「感情は不要」


 席を立つ。


「思考も不要」


 別の従者から錫杖を受け取る。 


「人は不要なものを持ちすぎているのです」


 錫杖を地面に打ち付ける。


「――それらはすべて虚様にお返しするべきなのです」


 男は薄く笑った。


「戒告に来ていただけない方々は、隠すものの無い心清きもの達です。故に、『病』という名の祝福を与えました」


 男はカードを取り出す。


「戒告に来た者は隠す物のある心悪しき者。故に、『死』という名の救済を与えます」


 そして男は呪詛(じゅそ)を放つ。


「イマジナリーナンバー8、Weakness(きょじゃく)<正位置>凋落の疾病。戒告に来た物(・)どもに『死』という名の救済を与えよ」


 室外から人々が倒れる音が聞こえる。

 男は静かに目を閉じた。

 そして満足そうに頷くと、部屋の窓を開け放つ。

 眼下に広がるのはゴミのように転がる人々の姿。


「さて、明日はどなたが救済を求めて戒告に来ていただけるでしょうか。そして、幾(・)つ(・)掬(・)え(・)る(・)でしょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。