↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/52

第28話 いりあすのしあわせのために

「……お姉様?」


 イリアスの顔をセラフィナが見つめる。


「……セラフィナ。あそこの商人とお客さんの会話を聞いてみなさい。――盗み聞きの魔道具は渡してあるでしょ」

「………………置いてきちゃいました」

「――私の予備を貸してあげるから、聞いてみなさい」


 セラフィナは耳に集音部を挿入する。

 そして、会話を聞いたが、違和感に表情を曇らせる。


「え……。会話が……」

「そうですの。『今日は良い魚が入っているね』というお客さんに対して、お肉屋さんが『えぇ、この野菜なんかは特におすすめですよ』と言っていますわね」

「でも、取引は成立しているみたいです。――イリアスお姉様、一体何が?」


 突然、盗み聞きしていた会話が途切れた。

 集音器で拾うことができないほどの小さな声で何かをつぶやいているように見える。

 そしてそれは徐々に大きくなり、はっきりと聞き取れるようになった。


「いりあすのしあわせのために」


 たった一言だけ。

 しかし、それが恐怖へと変わる。


「Zum Wohle von Irias」


 年端もいかない子どもが。


「Заради щастя Іріаса」


 高齢の男性が。


「Irias'ın mutluluğu için」


 王城の番兵が。


「……セラフィナ?」

「嫌っ! 何かがっ! セラの中に入っ……! ――いりあすのしあわせのために」


 そして、セラフィナが。


「「「「「「「「「「24sq21x2z42x2y41x4o3x2p241x8n012x2z1x2q3131521x4v21x2w32532151x4j273231x2p4312x2s21x5u435262426231x4p3231621x5y2521235343x2n31x2t3x2r27121x3w261323861x3y3451x4k313153125212353461x2s3x2z2712x2v1x2w31x5z31x3s21212x2t1612121212123521x3z612102x2k31x3r2x2s52x2w1x7p831x2s23241x5p321x3p21x5s2x2s5121x3v2x2v32612x2sjsb」」」」」」」」」」


 気がつくと城下町に住まう人々が一糸乱れずに、口々に意味不明な言葉をつぶやく。

 ――先まで浮かべていた笑顔を消し、イリアスを無感情に見つめながら。


「ひっ!!」


 思わずイリアスは集音器を耳から投げ捨てた。

 そのまま腰を抜かし、その場にへたり込んでしまう。

 城下町に住まう住民がゆっくりと、幽鬼のようにイリアスを取り囲み迫ってくる。

 ――それは隣に居るセラフィナとて例外ではない。


「いりあすのしあわせのために」


 イリアスの首にセラフィナの手がかけられ、ゆっくりと力が込められる。


「……せ、ら、ふぃな」


 息が、吸えない。

 

「いりあすのしあわせのために」


 視界が明滅する。


「いりあすのしあわせのために」


 体から力が抜けていく。


「いりあすのしあわせのために」


 絶対的な――死。


(……また、私は理不尽に奪われるのですの?)


 イリアスの手が「聖剣」に触れた。


(――ふざけてんじゃねーよっ!!)


 熱が「聖剣」から伝わってくる。

 僅かに、体に力が戻る。


(ふざけんなぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!)


 イリアスは首を絞めるセラフィナの腕に聖剣の柄を強引にたたき込む。

 柄頭を掴み、右に捻る。

 まるで独楽のように、セラフィナがイリアスの体から転げ落ちる。

 回転を利用し、イリアスは肩を軸にして跳ね起き、抜刀。

 セラフィナの体を峰で打ち据える。


「――黒、衣流。渦潮、ですわ」


 セラフィナの体から黒い煙が抜け、霧散した。


「……死、ぬかと、思い、ました、わ」


 なおも咳き込みながら、イリアスは思わず溢す。

 窒息寸前で動かなくなった頭を無理矢理に動かす。


(魔力的な干渉……ですわよね……?)


 セラフィナの様子を見る。

 その様子はただ眠っているだけのように見える。


(とりあえずの危険は排除。後は――)


 脇構えに構える。

 未だ息は整っておらず、肩は上下する。

 それでも。


(力をお借りしますわ。勇者様っ!!)


 自らに手を伸ばしてきた男を、女を、幼女を、男児を。

 次々と峰で打ち据える。


「――黒衣流。回旋撃(かいせんげき)」


 最後の一人が石畳に倒れ伏す。

 その体から、黒い煙が上がり、霧散した。


(流石に、もう、無理ですわよ……?)


 肩で息をする。

 静寂に包まれる城下町。

 しかし――。


「やっぱりイリアスはすごいな。流石は我が妹だ」


 感情が読み取れない平坦な声。

 自らの妹を称えるかのように拍手をしながら現れた男。


「……お兄様」


 男の名は、セオリス・ケテル・ヴァルハライト。

 イリアスの実兄にして、ヴァルハライト王国の現国王である。

文中にある謎の文字列は私が造った暗号になっています。

もし暇なら解読してみてください。

私が変換ミスをしていなければ、解読できるようにはしています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。