↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/52

第14話 隠蔽と露見と

「今月もギリ黒字か。贅沢(ぜいたく)さえしなければ、まぁなんとかなるだろ」


 時刻は夕方。

 場所はグーレイの店。

 帳簿をつけながら、グーレイがそうつぶやいた。

 その刹那、セラフィナが魔道具を爆発させる。


「……セラフィナが魔道具を壊さなければ、もうちょい黒字なんだがな」


 舞い上がる黒煙が晴れると、セラフィナがバツの悪そうな表情を浮かべて立っていた。


「ごめんなさい。また、やっちゃいました……」

「まぁ、しゃーねーだろ。だが、その腕輪のおかげで爆発の大きさはだいぶ小さくなったな」

「コレのおかげで、イヤだった魔力も体を治すのにちゃんと使える。うれしい」


 セラフィナが右腕につけたバングルを左手でそっと撫でた。


「なんだ、上手くやってんじゃねーかセラフィナ」

「いらっしゃいま――。あれ、アニキさん? 何でここに?」


 セラフィナが来客対応をしようとすると、そこにいたのはアニキと呼ばれる商人。


「あん? グーレイのおっさんに誰が商品を卸してっと思ってんだ? 俺様は商人だぜ? 依頼されて金さえ貰えるなら何だって仕入れて見せるぜ」


 そう言いながら無駄にいい顔をする。

 あきれた顔でグーレイはアニキと呼ばれる商人を見て、つぶやく。


「おい、アニキール。誰がおっさんだ。まだ48だぞ」

「40の時に『源書』に喧嘩売るような娯楽小説を書いて、45の時にバレて大問題。魔道具協会を追放だろ? そんなアホな経歴の持ち主なんて、おっさんで十分じゃねーか。あと、本名で呼ぶなっ!!」

「……あら、アニキさんって『アニキール』というお名前でしたのね。いいお名前じゃ無いですか」

「うるせーぞ、御落胤(イリアス)」


 店の奥からイリアスが現れる。

 その手には薬箱。


「セラフィナ? ケガは大丈夫かしら?」

「もうほとんど治っちゃいました」

「それは良かったですわ。ですけど、きちんと治さないとダメですわよ? きちんと魔力を循環させなさいね」


 アニキールはセラフィナの右腕につけられたバングルを一瞥する。

 そしてグーレイに目配せをした。


「おいイリアス。俺様はグーレイのおっさんに話がある。わりーが席を外してくれねーか。セラフィナもだ」

「あら、男が二人で何の悪巧みかしら?」

「言ってろ」


 そう言って手で二人を追い払う仕草をするアニキール。

 普段の冗談めいた軽い口調。

 だが、わずかに刃のような鋭さが込められている。

 イリアスはそれを理解し、セラフィナの背中を押した。


「……行きますわよセラフィナ。悪巧みをする男たちは置いておいて、二人で女子会といたしますわよ。お茶を淹れて差し上げますわ」

「はーい、お姉様ぁー。じゃあ、セラはお菓子を用意するー」


 二人はそう言い残し、奥の工房へと移動する。

 店と工房を隔てる扉が音を立てて閉められた。


「……アニキール。店は臨時休業にするがそれでいいな」

「……あぁ、一応サブの奴に見張らせてはいるがな。何があるかわからねーから、そうしてもらえっと助かるぜ」


 普段の軽い調子は鳴りをひそめ、声色が真剣なものになる。

 グーレイも同様に表情に真剣な色を浮かべた。


「……依頼された『例のアレ』だが、一応、見つけることはできた」

「おまえにしては歯切れが悪いな。――セラフィナか?」

「そうだ。さすがにセラフィナに『アレ』を見せるわけにはいかねーだろ?」

「……93人目だったか?」


 沈黙。


「……『源書』のバケモノ騎士しか使えなかった『アレ』だぞ?」

「別施設での実験体。おまえの……。確か、サブス君だったか?」

「……あいつは『サブ』と呼んであげてください」

「そうか。――サブ君の話を聞いたときは信じられなかったが」

「あんなやべー奴らの話を娯楽小説にしたのはおっさんだろ?」


 アニキールは頭を掻き乱す。


「……『アレ』を見せたら、あいつは戻(・)る(・)」

「少なくとも、今は、か」


 突如として、工房の扉が乱暴に開け放たれる。

 そして一人の少女が飛び出してくる。

 セラフィナだ。

 その目は焦点が合っていない。

 何かをブツブツとつぶやいている。


「サブ! 追えっ!!」


 店の扉から顔を出し、外にいるサブに命令する。

 サブはセラフィナが走り去った方へ走り出す。

 奥の工房。

 アニキがそこを覗く。

 転がったカップ。

 千切れた紐のついた耳栓。

 青い顔をして震えているイリアス。


「だから席を外せっていっただろうがっ!!」


 壁を力任せに殴るアニキ。

 その音にイリアスは身をすくませる。


「……聞かれちまった以上、仕方ねーか」

「――何を」

「あ? 呆けた事聞いてんじゃねーよ」


 アニキはイリアスの頭に手を置く。

 そして少しだけ力を込める。


「セラフィナを止めてこい。サブの奴では無理だ。おまえがやれ」

「なにを……」

「説明は後だ。――急げっ!!」


 そう言って、アニキールはイリアスの背中を強く叩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「行きますわよ、セラフィナ。私たちの『普通』を探しに」というセリフがすごく印象的です! イリアスがクレバーかつアクティブでとても好感が持てますし、その圧倒的な度胸と頭脳で困難をどう乗り越えていくのかが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。