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旅の理由は、あとで 〜百年かけて生まれたエルフ〜  作者: こなれたタオル
第二章 風の通る道

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途切れない森

 ヘルミオ商隊一行は、順調に旅の歩みを進めていた。午前中に村を出て、もうすぐ昼になる。ヘルミオは隣に座るフィーネの様子をうかがった。


「フィーネ、疲れましたか」


フィーネは笑顔を見せながら答えた。


「いいえ、初めて見る景色なので本当に楽しくて、あっという間に時間が過ぎている感じです」


「そうですか。それはよかった。もうすぐ、私がよく使う休憩によい場所があります。そこで昼食にしましょう」


「はい」


フィーネはとても驚いていた。今まで村の中からしか森を見ていなかったので、まさかこの森がこんなに大きなものだとは思わなかったからだ。午前中に出発してからずいぶん進んでいるはずなのに、森は途切れることなくずっと続いている。


そういえば、村の人たちがこの森のことを『エルカディアの森』と呼んでいるのをよく耳にした。エルカディアがいるからという意味なのだろうか。


「ヘルミオさん、みなさんはこの森を『エルカディアの森』と呼びますよね。エルカディアというのは、あのエルカディアさんのことなのですか?」


「ええ、そうですよ。正式には、この森林地区はフィオレスタといいます。ただ、この森はエルカディア様が治めておられますからね。皆、自然とそう呼ぶようになったのです。王都でも『フィオレスタ』より『エルカディアの森』のほうが通りがいいくらいですよ」


馬車は比較的ゆっくり進んでいるため揺れは少ない。それでも初めて乗るフィーネにとっては、その揺れにどう身を任せればいいのかわからなかった。ヘルミオが、馬車の揺れは逆らわず、流れに乗るように体を預けるのだと教えてくれたので、どうにか慣れてきたというところだ。


森の中にある村々を繋ぐ街道は、ちょうど馬車が一台分通れるくらいの幅だ。すれ違う時はどうするのだろうと思っていると、どういうわけか相手が待避所のような場所でヘルミオ商隊の馬車が通り過ぎるのを待っている。


そんなことが三回続いたので、フィーネはヘルミオに聞いた。


「あの、さっきの馬車はどうしてあの場所で待っていたのですか。わたし達が来ることをまるで知っているみたいに」


ヘルミオは、フィーネの問いに「あぁ」という顔をして答えた。


「この森の精霊のおかげですよ」


「え、精霊ですか」


「ええ。このエルカディアの森にはたくさんの精霊がいます。精霊たちは、我々が生活するうえで、様々なことを手伝ってくれるのですが、これもそのうちの一つですね。精霊が馬車の動きを把握していて、すれ違いが必要になると、待避所を通りかかった馬車を止めてくれるのです」


「簡単に言うと、馬が動かなくなるということよ」


フィーネの左側から声がした。馬車の横を歩いているセレナだった。


「馬は精霊の言葉が分かるみたいで、ちゃんと止まるの。だから、それを見て私たちも、ああ、向こうから誰か来るんだなってわかるわけ」


「へえ。でも、三回とも相手の方が待ってくださってるなんて偶然にしては多すぎませんか」


ヘルミオはフィーネの問いに大笑いした。


「いやいや、フィーネがその理由を一番知っているはずなのに」


「ええ、どういうことですか」


「ああ、まあ、そうですね。昼の休憩の時にでも、あなたの守り手に聞いてみてください」


「……はい」


――守り手って、え、まさか……


フィーネは思わず、荷台のほうへ振り返った。ゴローが荷の上に腰を下ろしたまま、つまらなそうに揺られている。


――あとで、ゴローちゃんに聞いてみよう


隣では、まだヘルミオが笑い声を押し殺しながら手綱を握っている。

フィーネは少し前を馬で進むラウディスを見た。街道をはずれて、森の中へ入っていく。


「さあ、もうすぐ休憩ですよ。綺麗な泉がありますから、そこで昼食にしましょう」


ヘルミオがそう言うと、セレナやフィル、リオネルが一斉に声を上げた。

今日から第二章です。

第一章は村での暮らしでしたが、ここからフィーネは旅に出ます。少しずつ世界も広がっていきますので、引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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