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Uさんによる投稿

 9月に入ってから朝夕が肌寒くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。H市でお会いしたUです。あの時は途中までしかお話し出来なかったので、こちらのフォームから続きを投稿させて頂きます。


 砂浜での出来事があってから、Rちゃんは天使にハマる前のRちゃんに戻っていました。クラスメートに天使のことを聞かれたりした時は恐怖が蘇ってパニックになっていたけど、そういうことも段々なくなって、このまま元通りになると思っていたんです。

 けれども、あれから二週間程経った頃でした。あの日は、台風でもないのに遠くが白んで見えるほど大雨が降っていたのを覚えています。教室移動の途中で渡り廊下を歩いているとき、一瞬池みたいな臭いがした気がしたんです。本当に一瞬のことだったから、その時は気のせいだと思いました。何が起こっているのか理解できたのは、選択授業が終わって教室に戻った時でした。別の授業から戻ってきたRちゃんが真っ青になっているのを見て、初めて臭いの正体を思い出したんです。

 必要以上にRちゃんを怖がらせたくなかったから、私はなるべく少しずつ聞き出すことにしました。何か怖いことを思い出したのか、見たり聞いたりしたのか、学校に、あの天使が来ているのかと。案の定、天使が見えたかもしれないということでした。教室移動の時に、何か黒っぽいものがプールの真ん中に立っていたけれど、恐る恐る確かめた時にはいなくなっていたそうです。

 今すぐ逃げるべきなのか、天使が諦めるまで待つべきなのか。Rちゃんに相談してみても、「無理、外に出たら殺される」の一点張りでした。天使が校舎に入って来ないことを祈ることしか出来ず、不安が募るばかりで授業もなかなか頭に入ってません。日が暮れたらRちゃんはここで夜を越す気なのだろうか。ふと気になって後ろの席に目を遣る途中、何かが視界に入ったような気がしました。視線を少し戻せば窓の外が見えるのに、恐ろしくて目を向けることさえ叶いませんでした。うっかり外を見ないようにRちゃんを見つめていると、私とは反対にRちゃんの目はグラウンドに釘付けです。まさか、今のが天使だったのだろうか。恐る恐る確かめると、雨が降りしきるグラウンドの真ん中に人影が見えました。雨のせいか、それとも薄暗いからなのか、ぼんやりとした輪郭が見えているだけなのに、分かるんですよ。向こうが私たちを、じっと見ているのが。

 頭の中が真っ白になって、指どころか目すら動かせませんでした。我に帰ったのは、Rちゃんの悲鳴が聞こえたからです。悲鳴といっても映画みたいな可愛いものじゃなくて、凄まじい金切声で喚き散らしていました。Rちゃんは椅子をこかすのも構わずにがむしゃらに教室を飛び出し、呼び止めるのも間に合いませんでした。追いかける寸前にちらっとグラウンドを振り返ったんですけど疾うに人影は消えていて、だから危ないと思ったんです。

 廊下に出た時、Rちゃんが突き当りを曲がる姿が目に入りました。グラウンドとは反対方向、渡り廊下がある方です。大粒の雨が窓を打ち付けていて、声を張り上げても私の呼びかけは届きませんでした。それでも必死に追いかけ、鉄の扉を開け放つと、なぜか渡り廊下の真ん中でRちゃんが立ち止まっていました。Rちゃんに声をかけ、どうしたのか尋ねても何の答えもありませんでした。といっても尋ねるまでもなく、近づいて確かめれば答えは足元に転がっていたのですが。

 Rちゃんの肩越しに私が見た物は、私があの日海に捨てた、天使の白い貝殻でした。

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