第18話『共同会見前編』
総理にもなると分単位でスケジュールが事前に組み込まれて新たなタスクを組み込むのは難しい。
甚大な災害や有事など、国民の生命に直結する事案に関しては以後の予定は全てキャンセルして対応に当たるが、平時では総理としての威厳と信用を維持するためにもキャンセルは出来ない。
祝日は平日より公務は少ないが、祝日だからこそ出席を求められる式典や行事も存在し、広報的にもキャンセルはしたくなかった。
佐々木総理が共同会見を望む日取りは二十九日の昭和の日。祝日だった。
幸いこの日に行事等参加しなければならないイベントは組み込まれておらず、職員には祝日出勤と苦労を掛けるが、リスケジュールをせずに総理が硫黄島に向かうにはベストな日であった。
天自艦隊が硫黄島に上陸してから八日後の四月二十九日。
政府専用機は羽田空港に駐機し、先行して同乗する大手メディアの撮影チームが乗り込む。
史上初の別世界から来た人類を初めてメディアが報道する機会に、挙手をしないメディアは存在しない。メディアの規模に関わらず国内外から取材許可を求める問い合わせが殺到したが、日本政府は同行を国内大手メディアに限定した。。
これは不要な手間と混乱を防ぐため、そして事前に質疑応答はしないと通達もしてあり、撮れる映像が同じなら何社も参加させる意味がないからだ。
広報として総理が正規の手続きで硫黄島に向かうことを見せるため、国外に外遊すると同様に同乗しないその他のメディアに見守られながらタラップを上って政府専用機へと乗り込み、定刻で離陸。総理として幾度か赴いた硫黄島へと向かった。
硫黄島では総理受け入れと会見準備が進んでいた。
総理が硫黄島に来ることは少なくない。
先の大戦の激戦区だった硫黄島には、いまだに日米の遺骨が残されている。硫黄島に駐在する自衛官たちによる遺骨収集は重要な任務の一つであり、総理は先の大戦を風化させないためにも、遺骨収集に携わる自衛官たちをねぎらうため定期的に硫黄島を訪れていた。。
佐々木総理が硫黄島に来たのは就任以来三度で、今回四度目である。
ただ、今回の目的は全く異なる。
会見場は転後日本の要望で屋外となった。
通常会見は外光の入らない屋内でするものだが、転後日本の予定している会見内容を考えて屋外が好ましいとのことでそうなった。
硫黄島は絶海の孤島であり島内は自衛官を含む全員公務員。両首脳が同席するとはいえ安全面に問題はなく、天候も快晴ともあって会場は自衛官たちの手によって準備をされていく。
政府専用機は定刻通りに硫黄島の滑走路に着陸をした。
硫黄島から数キロ沖合には別世界から来た武装艦隊が座標に固定され、波風に左右されず鎮座している。
本来であれば、正体不明の武装艦隊の数キロ圏内を総理搭乗機が通過するなど、警備計画の段階で却下される。しかし二週間に渡る会談により、危険性は無いと説き伏せて硫黄島到着を決定。転後日本もその信頼に応えるべく疑念を抱かせる行動を何一つしなかった。
まず最初にメディア関係者が降機してその後に政府職員とSPが降機する。
メディア関係者がカメラ設置などをしている間にSPがタラップ周辺に立って周辺警護へと入り、準備が整ったところで佐々木総理は専用機からタラップへと足を乗せた。
さすがに諸外国への外遊ではなく自国の島なため、特徴的な手を振りながら降りるようなことはしない。
淡々とタラップを降りて硫黄島へと足を下したのだった。
タラップの下には礼装に身を包んだ高岡一等空佐硫黄島基地司令が待機していた。その隣には波川海将補を含む秋庭たち接触班も礼服を着用していた。
高岡一佐はタラップを降り切った佐々木総理に敬礼をした。
「佐々木総理、硫黄島へようこそお越しくださいました。硫黄島航空基地司令の高岡一等空佐であります」
「ご苦労様です」
佐々木総理も返礼をする。
続いて佐々木総理は波川海将補たちに視線を向けた。
「接触班の皆さん、長期の任務ご苦労様です」
「ありがとうございます。会場の準備は滞りなく終了しております。新政代表他の方々は庁舎にてお待ちしております」
「分かりました。早速向かいましょう」
「こちらです」
高岡一佐は滑走路脇に停車している自衛隊車両へと案内し、佐々木総理は後部座席に乗り込んだ。
助手席に高岡一佐が乗り込む。
「高岡さん、空から天自艦隊を見ました。話は聞いていますが、転後自衛官との交流に問題はありませんか?」
「はい。現在は非番時間を利用して交代で上陸しており、我が隊員との交流も進んでおります。これまで大きなトラブルの報告はありません」
「それは良かった。向こうも向こうでトラブルは避けるよう指示が出ていたと思いますが、平和的に進めて何よりです」
「ありがとうございます。隊員たちにも後ほど伝えます」
双方共に関係性が最重要であることを理解している。
超技術を持つ転後日本と、国家としての基盤を持つ戦後日本。歩み寄ろうとしている中で些細なことでトラブルが起きて個人レベルで不和を起こしてはならない。
高岡一佐はそれだけは避けるよう命令し、転後日本もそう命令をしたに違いない。
そして同じ日本人だからこそ、時代観の相違はあれど仲違いはしなかった。
窓から海を眺めると、沖合に停泊する大型の艦船が見えた。
今までモニター越しでしか見てこなかったが、こうして肉眼で見るとその存在感はまるで違う。波に揺れる周囲の海とは対照的に、艦隊は微動だにしない。
別世界から自衛艦隊が来たのは、紛うことなき事実だった。
*
佐々木総理を乗せた自衛隊車両は基地庁舎の前に止まり、ドアが開かれて佐々木総理は車を降りた。
常夏の硫黄島は四月下旬で気温は二十五℃とある。そして雲一つない快晴で燦燦と輝く太陽の光が矮小な人々を照らしていく。
公人ゆえに服装は厳格で着崩すことが出来ず、陽光の下ではあっという間に体感温度が急上昇していった。
庁舎の中は弱冷房だが掛かっており、本土よりは涼しくないが屋外よりははるかに快適な室温を維持していた。
高岡一佐の案内で会議室前へと案内される。
「こちらに新政代表と代表団の方々がお待ちしております」
「ありがとうございます」
とはいえ総理が扉を開けて入るわけには行かない。総理としての品位を保つためにも開けてもらう必要があるため、高岡一佐は会議室の扉をノックすると扉を開けた。
三十人ほど入れる会議室に十名ほどの背広を着た人たちが入室しており、佐々木総理の入室に合わせて起立をした。
佐々木総理の視線は自然と一人の男へ向かった。
ここ二週間、短時間でも毎日のように会話をし続けた、もう一つの日本の代表。
「ようやくお会いできましたね、新政さん。日本国総理大臣、佐々木源五郎です」
「こちらこそ。転後日本国防軍、天上自衛隊、第一次恒星間転移派遣隊の代表の新政智一です」
二人の首脳は歩み寄り、力強く握手を交わした。
何度も言葉を交わした二人の挨拶はシンプルだ。しかし全てが詰まっている。
「……今、確信しました。あなた方は別世界から来たとしても同じ日本人です」
「それはうれしいです。どうしても異星を経由すると人間を模した異星人や洗脳された人と言う先入観が植え付けられてしまいますので」
現代のエンターテイメントの弊害だ。最初から異星人と接触を果たした未来世界ならともかく、現代で地球にやってくる異星人の大抵が侵略目的である。
終始友好的な作品も知ってはいるがごく少数と言えよう。
同系のエンタメを築き上げてきたからこそ、同じ価値観で危惧することが出来る。
「我々がその杞憂を払しょくするいち役を買いましょう」
「ありがとうございます。ですが、完全な信用もななさらないようお願いします。九割の信頼と一割の疑念。これが友好的な関係の秘訣であることは、佐々木さんが一番理解されていると思いますので」
「そのつもりですのでご心配なく。政治の世界ではむしろその逆ですからね」
伊達に憲政史上最長政権を維持していない。政界なんてむしろ嘘まみれで正直者が馬鹿を見る世界だ。
そうした世界で生きているからこそ、新政代表の意見には賛同できる。
「私たちとしても、この世界が別世界の地球で、正真正銘同じ日本であると確信できました。不本意ながらも『二つの日本』となってしまいましたが、友好的な関係をより深く構築していきたいと思います」
「こちらもです。政府として、あなたがた転後日本を迎合するつもりはありません。しかし、協定は結びたいとは考えています」
「そうですね。私たちには私たちの日本があります。同系存在であっても、国家として統合されることは望みません」
「承知しています。むしろ我々からしても手に余ります」
二つの同国問題は双方の地球で存在して現代でも続いている。
しかし、二つの日本に関しては互いに望んでいない以上、厄介な問題になることはない。
その確認をこうして直接言葉を交わして出来たことは大きかった。
「転後日本は国家基盤がない。戦後日本は転後技術がない。そのない部分を補い、協力し合い、皆さんを元の世界に戻したいと考えます。そして少しだけ恩恵を賜ればとも思っています」
「恩恵についてはこちら側でも考えています。上手くいくかは分かりませんが、無下にはしません」
「では、その第一歩となる会見の打ち合わせと行きましょう」
「そうしましょう」
非公式の両首脳ファーストコンタクトは上々に済み、世界に転後日本の声を聴かせる最終打ち合わせを始めた。
これから世界は知ることになる。
天自艦隊とは遭難した日本人ではない。
産業革命以降で最大級の技術革命を携えて現れた、もう一つの日本なのだと。
*
会見会場は硫黄島の西端にある揚塔場で執り行われる。
硫黄島の西端で唯一コンクリートで舗装されて足場がしっかりし、かつ沖合に停泊する天自艦隊を一望することが出来るためそこが採用されたのだ。
そして会見内容にも符合するため好都合だった。
揚陸場として使われる揚塔場は百メートル四方のコンクリートで舗装され、その中央に会見場として壇上が用意し、内陸側に取材陣が機材をセッティングして艦隊を背景にする。
合わせて大手メディアのレポーターが、民間として初めて別世界から来た護衛艦に対してレポートをする。
「沖に見えますのは四月十一日に衝撃波と共に現れた並行世界の、約五十年後の異星に国土ごと転移した転後日本から来た護衛艦隊です。現在確認されているのは空母級護衛艦一隻、駆逐艦級護衛艦五隻、補給艦二隻、宿泊艦二隻の計十隻。乗員は三千五百名以上と発表されています。転後日本は戦後日本と歴史を共有しながらも、約五十年前に別の道を歩み、異星で独自の発展を遂げたとされています。そのため保有する技術水準は現代社会を大きく上回る可能性があるとして、世界各国が強い関心を寄せています。本日はこのあと、佐々木総理と転後日本の新政代表による初の共同会見が予定されています。転後日本に関する情報は日本政府が代弁する形で発表しており、公の場で直接声明を発表するのは今回が初めてです。世界中が注目する歴史的な会見まで、まもなくとなります」
各メディアのレポーターもそれぞれレポートをする。
「あ、車両が来ました。総理と代表が乗っていると思われます」
基地庁舎から一台の車両が走ってきて、レポーターとカメラが反応する。
車両は壇上の脇に停車すると、左右の後部座席が開いた。
二人の男性。一人は報道では日常的に目にする日本の行政トップの佐々木総理。
そしてもう一人が、史上初のこの世界の生まれではない人間にして総理相当の新政代表。
「佐々木総理と、転後日本の新政代表です。これから共同会見が始まります」
壇上には交差させた二本の日章旗が掲げられ、佐々木総理と新政代表はそれぞれ一礼して壇上に上がった。
「今月十一日に発生した衝撃波事象、ならびにそれに付随する形で出現した所属不明艦隊について、現時点で判明している事項を国民の皆様へ説明いたします。
四月十一日に発生し、太平洋沿岸各地で観測された衝撃波は、この世界とは異なる並行世界において実施された大規模転移事象の影響によって発生したものであることが確認されています。そして、その転移事象に伴い、通称『転後世界』より十隻からなる艦隊が本世界へ出現しました。
これらの艦艇は我が国を含む世界各国の建艦記録に存在せず、その後の調査及び当事者との接触によって、並行世界の日本が運用していた艦隊であることが判明しています。
転後世界は我々の知る歴史と起源を同じくしながらも、およそ半世紀前に異なる道を歩んだ世界でした。転後日本は2019年に発生した事象によって国土ごと異星へ転移し、その地で約五十年にわたり国家を維持してきました。
そして転後日本は、異星で得た資源と技術を用いて元の地球へ帰還する計画を実施しました。しかし、その過程で原因不明の事象が発生し、結果として並行世界への移動と時間的な遡行が同時に発生したものと説明を受けています。
以上が、四月十一日に発生した事象の概要です。
政府は事象発生直後より、自衛隊及び関係機関を通じて転後日本との接触を開始しました。私自身も転後日本において総理大臣に相当する権限を有する新政代表と会談を重ね、その説明内容の検証を進めてまいりました。
その結果、政府としては、これまで得られた情報及び相互交流の実績から、転後日本側の説明は事実である可能性が極めて高いと判断しています。
また、転後日本の目的についても確認を行いました。彼らが本来目指していたのは、地球と異星フィリアを結ぶ恒久的な移動経路の構築でした。しかし本世界へ到達した現在、その目的は元いた転後世界へ帰還することへと変化しています。
彼らにとって、この世界の領土、資源、あるいは政治的支配を求める意思は存在しないとの説明を受けており、これまでの交流においても、その説明と矛盾する行動は確認されていません。
約二週間にわたる自衛隊及び政府レベルでの接触を通じ、政府としては転後日本との間に友好的かつ平和的な関係を構築できているものと判断しています。
転後日本の最終目標は、元の世界へ帰還することです。我が国は今後、その実現に向けてどのような協力が可能であるかを慎重に検討してまいります。
我々は同じ歴史を起源とし、同じ文化を受け継ぐ日本です。たとえ世界を異にしていたとしても、困難な状況にある日本に対して手を差し伸べることは、我が国として当然の責務であると考えています。
政府は引き続き国民の安全を最優先にしながら、転後日本との協議及び必要な支援について検討を進めてまいります。」
続いて新政代表が頭を下げた。
「世界の皆様、初めまして。転後日本国防軍、天上自衛隊、第一次恒星間転移派遣隊の代表の新政智一と申します。
先ほど佐々木総理より説明をされましたように、我が艦隊はこの世界に不本意で来てしまいました。そして衝撃波を含め、正体不明の武装艦隊が現れたことで混乱をさせてしまい、申し訳ありませんでした。
派遣隊を代表して謝罪をいたします。
まず皆さんが知りたいことをお話しします。我々は皆さんにとって敵か否かですが、残念ながらそれを証明するすべがありません。
我々も同じエンターテイメントを持っているため、由来不明の存在の言葉を鵜吞みには出来ないことを理解しています。信頼してほしいと言われても難しいと思うため、我々の言動を見定めて主張と差異がないかを判断していただきたいと思います。
佐々木総理の説明された通り、我々はこの世界に意図的に来たわけではなく、来れること自体想定していませんでした。幾度と実験をしても今回のような事象は発生していなかったため、我々自身対応に苦慮しています。
現在原因の究明をしていますがまだ判明していません。帰還の目途が立たない以上、我が艦隊はこの世界に滞在し続けます。
そして、事前に戦後日本より公表された通り、我が艦隊にはこの世界にはない技術を多数保有しています。
熱を電気に変換する『レヴィニウム』
電気によって浮遊する『レヴィロン機関』
あらゆる物理現象を防ぐ『コクーン』
レヴィロン機関を利用した『鉄甲』
その他にも本日紹介するもの以外に多数の技術体系が存在します。
おそらく世界中の皆さんは、未来の異星の技術をその目で見たいと思っていることでしょう。
これは友好的な意味も込めて、それらの実践をお見せしたいと思います」
そう告げて一旦区切りをつけると、顔を乗り込んできた車両の方を向いた。
するとその車両の脇から、ろうそくと赤い鉱物に繋がった基盤とコードの束を持った人が現れた。
服装が背広だから、戦後と転後、どちらの人間なのか見極めができない。
「報道の皆さんすみません。一つ実験を行いたいのでノートパソコンを一台貸してはもらえないでしょうか」
突然の要請に会見を撮影している報道陣は顔を見合いあった。
「もちろんそのパソコンになにかするわけではありませんし、そばで見ていただいても結構です」
すると一人の報道関係者がノートパソコンを一台持ち、迂回する形で壇上へと向かいだした。
「ありがとうございます。では皆さん、パソコン画面を注視してください。すみませんが、画面を見せたいので見られても問題ないように適当なのを全画面にしてもらえますか?」
デスクトップ画面ではソフトのアイコンが映ってしまう。それを避けるため新政代表は要望を出して、見られても問題ないように汎用ソフトを立ち上げて全画面表示させる。
「カメラマンの皆様、こちらに近づいて画面のバッテリー部分に注目してもらえますか?」
さらなる要望で、報道陣たちは動いて壇上に近づき、壇台に乗せた白一面の画面の右下にあるバッテリーをフォーカスする。
「右手にあるのはただのろうそくで、左手にあるのは手製のレヴィニウム発電ユニットです。これとパソコンをコードで繋ぎ、火をともしたろうそくを近づけます」
新政代表の右手にはろうそくがあり、左手にはパソコンとコードでつながれた赤い鉱石を持っていた。ろうそくを壇台に乗せて火を灯し、その火が当たるようにして赤い鉱物を近づける。
すると、88%と表示されていたバッテリーが充電中へと切り替わった。
「この赤い鉱物がレヴィニウムで、熱エネルギーを電気エネルギーに極めて高効率で変換します。レヴィニウムから伸びてる基盤は電圧調整用です。今、このパソコンはろうそくの火だけで充電をしている状態です」
めらめらと燃えるろうそくの火を赤い鉱物が受け、その熱が電気に変換。変電されてパソコンに給電される。
充電マークがあるということは、パソコン自体の起動と充電を同時に行っているということ。つまり急速給電をしていることになるのだ。
「ろうそくの火程度で変換される電気は六十w以上。この時代のパソコンであれば十分な電力が得られます」
説明する口調は常識を説明するような穏やかなものだったが、報道陣を含め戦後側の人間は大勢が衝撃を受けた。
熱を電気に変えるのは一般的な発電方法だ。火力発電や原子力発電は、熱が作り出した蒸気をタービンで回すことで電気を作り出す。他の発電方法も、手段はどうあれタービンを回す手段として用いられる。
しかし、レヴィニウムは熱を直接電気に変える。それだけでどれだけ革命的なのか、報道の業務について様々な事業を取材しているから分かる。
しかもろうそくの火程度でノートパソコンを動かせるのだ。
熱を電気に変えるということは、理屈の上では熱源の種類を問わないということになり、熱を冷やす冷却にも持ち入れられるはずだ。ならば原子炉やデータセンターなど、莫大な熱を冷やすために使えば、電気を生みつつ冷やすことが出来る。いわば熱のリサイクルが出来ることになる。
「レヴィニウムの変換効率は理論上の上限であるカルノー効率に達します。このろうそくの火に当てはめるとロスを含めて約七十九パーセントとなりますね」
熱エネルギーの八割を電気に変換する。
事前情報で把握はしていたが、実際にその光景を目の当たりにすると、その異様さが嫌でも理解できた。
産業革命やデジタル革命と、人類史は革命を経て文明を飛躍的に上昇させたが、これはそれを上回る革命になると、報道陣は皆理解した。
いや、報道陣だけではない。生放送を通じて見た多くの国や民間企業は痛烈に理解する。
この鉱物は破滅と繁栄双方を齎す、と。
「では次の説明と行きましょう」
新政代表は、戦後側の衝撃に意を介さずに次のプレゼンへと移行した。




