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006話 想定通りの予定調和

「拙者はこのたび、皇帝陛下より新しい辺境伯閣下の補佐役を仰せつかったコーセー・ウィーヴィアと申す。先の大戦では先代タメーノ様にもお世話になり申したが、お初にお目にかかる方も多いと存ずる。新参の外様ではあるが、この度のことが大事にならぬよう譜代の家臣の皆々様と力をあわせて参りたいと存ずる。どうぞ、よろしくお願い申す」


「コーセー殿。お初にお目にかかります。私は ゲンゴー・シュグールと申します。ボードサリューという辺鄙な地にて農業を営む田舎者でございましたが、先代様のお目にとまって引き立ていただき、現在は、勿体無くもお屋形様の身の回りのお世話をさせていただいております」


「ほう。おぬしが、『あの』ゲンゴー殿か。聞き及んでいるぞ。相当な知恵者とのことだな。すでに様々な分野にてご活躍中とのお噂がきこえてきますぞ。もはやお屋形様の右腕とか」


「いえいえ、若輩の身。ただただトーガル辺境伯領のために粉骨砕身しているだけでごさいます。なにぶん、この資源の少ない痩せた辺境の土地がら、領民の暮らしを成り立たせるのは、なかなかに至難の業でございます。少しでもお役にたてればと日々思案し、試行錯誤する毎日でございますが、お屋形様には、この田舎者の猿知恵を過分に評価いただき、恐れおののく日々でございます」


「そうか、田舎者の『猿』知恵か。なるほど、おもしろい」


「いえいえ、特段の意味はございません。曲解なされませんようお願いします。ともかく、私はこの辺境『トーガル』の領民の暮らし向きを少しでも良くするために、とにかく一所懸命に汗水流すだけの田舎者に過ぎません」


「そうかの?貴殿ほどのキレ者であれば、辺境に埋もれさせるのは惜しいと思うがな。中央での立身出世などには興味はござらぬのか?よければ、拙者が口利きぐらいはさせてもらうが」


「そんな滅相もございません。この田舎者にとっては目も眩むようなお話でございます。とてもとても。私には引き立てていただいた先代様への大恩もありますので、大変ありがたいお話ではありますが、なにとぞご容赦ください」


「まあ、良かろう。貴殿とは、いつか酒でも酌み交わしながら、ゆっくりと話をしたいものだな」


「はい。いつか、ゆっくりと。お手柔らかによろしくお願いします」


えと、このやりとり、なんだと思う?


コーセーってのは、大戦の時に親父が雇った諜報部隊のリーダーだったんだよね。その後もいろいろ裏で働いてくれてたんだけどさ。その実は皇帝の持ち駒だったなんてオチでさ。皇帝も手が広いというかなんというか。まあ、大戦中だったし、味方だったわけだから、貸してくれてたってことだよね。


うん、ウィーヴィア家っていえば、皇帝の影を仕切ってる名門だもんな。本人の意志は知らないけど、秘伝の技術とかもあるんだろうし、そう簡単には独立して他家へなんてことはできないよな。


んで、親父が亡くなってから皇帝に挨拶しに行った時に現れて、俺のお目付けっぽい感じであらためて辺境伯家の家臣として俺んとこに来るってことになったんだよね。


一応は皇帝との繋がりも残すけど、辺境伯家優先で働くっていうことらしい。だから心強い味方だよ。たぶん。まあ、うちには北方守護って役割があるから、うちを守ることが帝国を守ることでもあるというような建前というか、まあ、事実ではあるからそれでいいんだけどさ。


問題はさ、うちと王国との繋がりの部分なんだよね。ゲンゴーのこととか、ゲンゴーのこととか、ゲンゴーのこととか。とっても大事なことなので3回言ってみたよ。それでさ、忘れてないよね?ゲンゴーこと、ジュセフ・ストーンパディは王国の前の宰相の次男なんだよ?つまり、先の大戦で帝国と戦った王国側の総大将の息子。なんでここに生きているのか不思議なくらいの存在だよね?


皇帝もさ、あれだけの目と耳を持ってて知らないわけないと思うんだよね。ていうか、それこそウィーヴィア一族使って調べまくってるんだろうなって。でも、なんとなく黙認してくれてるんだろうなって不気味さあるやん?うん、公式に分かってしまえば、なんらかの対応はしなきゃいけなくなるから大変なのは分かる。その辺の費用対効果の見極め中なのかもしれないけどさ。


そもそも、俺、帝国に反旗翻す気はないし、ゲンゴーだってそうでしょ?「親のカタキ!」って突っかかっていってもなんともならないのは分かりきってるし、ハナからそんな気はないよね。だから、たぶん、特に害はないし、黙認して働かせとけば帝国の利益にもなるって計算なんじゃないかな?って思うんだ。あ、この辺りはゲンゴーの請け売りだけどさ。


え?リュリュは大丈夫かって?大丈夫なんじゃないかな?なんせ、皇帝も頭があがらない聖女ネーネ様の愛娘なんだからさ。うん、そっちはネーネ様に泣きつけばなんとかなる。どうしてもダメだったら、ふたりで国外に駆け落ちでもしよっかな?なんてね。


というわけで、クマーノ対応で関係者が集まって、まずは相互にご挨拶をって段階だったんだけどさ。うん。帝国から派遣された密偵と隠れ潜んでた指名手配犯のご対面って感じだからな。まあ、多少はやむを得ん。


コーセーだって、皇帝が半ば黙認してるのは理解してるだろうし、わざわざことを荒立てることはしないってことだよね。にしても、主人を前に引き抜きみたいな話までしてさ。やっぱ、ここでおとなしくしてる分にはアレだけど、帝都に手を伸ばすようなら…… そういう警戒はしてるからなって警告なんだろうな。


ゲンゴーはバレバレだとは理解しててもトボケてシラを切りとおすしかないよね。まあ、そういう野心はないわけだから、そこは素で正直に言えばいいだけなんだろうけどさ。それにしても、あんまり目立って名前が出ないように、あらためて気をつけなきゃって思ってそうだな。


それぞれ大人な対応してるんだけど、この微妙なやりとりには、周りがドキドキしちゃうよね。


あ、なんか、ふたりでニッコリしながら、握手してるし。うん、仲良きことは美しきかな。ゲンゴー、なんか脂汗流して痛みを我慢してるような表情になってるけど、どーしたんだろ?腹でも痛いのかな?うん。コーセーは太い腕してるねー?筋肉むきむきマッチョマーン。


一応、整理しとくと、本日、俺ンチの円卓にお集まりの皆さんは、以下の方々:


ノブ・トーガル(23) 辺境伯家当主、つまり俺


ヒローノ・トーガル(38) 筆頭家臣、義兄、外科医


コーセー・ウィーヴィア(43) 次の筆頭家臣候補、帝国からの目付役、外交・政務担当


ゲンゴー・シュグール(24) 次の次席家臣候補、開拓・交易・築城・実務担当、執事(?)


ユーニヴ・ピンフィール(50) 譜代の家臣、武闘派筆頭、内科医


アンディ・ノスウェスト(40) 譜代の家臣、冷徹な武闘派


クロード・ハイペント(40) 譜代の家臣、武闘派、野心家


一応、俺にだって、このくらいの味方はいるんだぜ!エッヘン。え?ゲンゴー若過ぎ?いやいや、だってリュリュの兄ちゃんだよ?こんなもんやん。あ、ヒロ義兄はすんなりコッチの仲間入りです。え?やりとり?そんなの前話で出尽くしちゃってるやん。


「じゃあさ、コーセー、帝都の方はどうなったか教えてくれる?」


「はっ。帝都の方は、アマミ大司教が万事取り計らいくださるとの内諾が得られております。マルサス様は少々難色を示しておられたようですが、最終的には、お引き受けいただけることになった由にございます」


「そっか、良かった。そりゃあ、マルサス様が1番の貧乏くじなんだからね。でも、引き受けてくれるんだね。良かった。アマミのじいちゃんにお礼いっとかなきゃな」


「はい。大司教のご尽力ももちろんですが、どうもマルサス様は、これは内々の話なのですが、近ごろ背中に腫物ができて腕の良い外科医を探しておられるとのことで。ヒローノ様のお話をしましたところ、ヒローノ様の父君のことをよくご存知で、そのご子息なら是非にと急に乗り気になられたようです」


「なるほどね。人の縁ってのは、どこで繋がるか分かんないもんだね。ヒロ義兄、そういうことみたいだけど、大丈夫かな?治せそう?」


「そうですな。もちろん、診察してみぬうちにはなんとも言えんが、表から見えておる腫物ならば、切除はできるだろう。ただし、かなりのご高齢ゆえ、どこまでを切り取るかは体力をみながらということになるだろうな。いずれにせよ、観てみんことにはわからん。しかし、ワシで無理なら、誰にも治せないだろう」


「あはは、ヒロ義兄、さすがだね。じゃあ、そのあたりは任せたよ」


「うむ。その点は、任せてもらおう」


「それじゃあ、ヒロ義兄。クマーノ陣営の掌握の方はどう?」


「それは訳ないことだ。ヒューゴのジジイに耳障りのいいことだけを言って懐柔すればよい。あやつらは口では勢いがいいが、それで蜂起となるかというと、キッカケもなしに纏まった動きはできんだろう。次の具体的な方策はなにも持っておらん。ワシが『うまい方策』を示せば、簡単に乗って来るだろう」


「うん。そうだね。それじゃあ、そっちも任せるね。よろしく」


「うむ。しかと」


「コーセー、帝都との連絡の方は引き続きよろしくね。なんか事態が動いたり、状況が変わったら教えてくれよ」


「はっ、承知つかまつってごさる」


「それじゃあ、ユーニヴ、アンディ、クロード」


「「「はっ」」」


「3人は、それぞれ配下の領兵の方を頼むよ。今の進捗だと、たぶん戦いは半年後、冬になる。冬の戦いに備えてほしい。帝都から逆臣討伐の許可がおり次第、活躍してもらうことになるからね。くれぐれも先走って戦端をひらいちゃうようなことはしないでよ。まずは我慢して、冬までにしっかり練兵しておいてよ。そうだ、ユーニヴ」


「はっ」


「たぶん、ユーニヴんところが1番の激戦になると思う。全体として負けることはないと思うけど、死なないように気をつけてくれよ。この戦いが終わってからが、俺たちの本番なんだからさ。必ず生きて、また手を貸してくれ」


「はっ、お屋形様のお言葉、ありがたき幸せにて、このユーニヴ、命に代えましても──


「あはは、命に代えちゃダメだってのに。アンディとクロードも同じだよ。必ず生きて、その後も俺に力を貸してくれよ。いいか?」


「「はっ」」


「うん。それじゃあ、今日は顔合わせって感じだったわけだけど、だいたい分かったかな?なんか、分かんなかったこととかある?特になければ、これでお開きってことに──


「お屋形様!」


「はい。なんでしょう?」


なんでしょう?ユーニヴさん?さすが武闘派筆頭。目がギラギラとしていらっしゃる。あ、クロードさんも。あ、アンディさんもいらっしゃいましたか……この人、目が怖い。


「こいだげの人とば集めでおいで、呑みもしねって、どんだんだきゃ?」


「え?」


「んだでばな。こいだば、呑まねばまいねんでねがなーと、我は思るんだばで、お屋形様は、そうは思わねーんだべか?」


「え?え?」


「おー、来た来た。早ぐさねが」


え?なんで、いつのまにメイドさんたち、スタンバって…… あれ、そういえば、ゲンゴーってどこいった?


「へば、お屋形様、まずは我ど」


「汝、なに喋っちゃずや。我が先だべな」


「待づれ!まずは、皆して乾杯すべし!当だり前だべや!」


「んだんだ。お前だち、わんつかでいいはんで、常識っとば持ぢへ」


「へば、へば、お屋形様、まんず、グラスとば」


はい。なみなみと液体のはいったグラスが配られました。はあ、俺にも渡されました。はい。そうですね。なんで、こうならないと思った?


「はぁぁーぁ…… では、我々の勝利と、トーガルと帝国の穏やかで平和な未来を祈って──


「「「「「「「かんぱーい」」」」」」」


リュリュに会いたいな……


(つづく)


あとがき


どうも筆者です(^^)/'


大勢が集まる場って苦手です。マンツーマンなら、それなりに話せるけど、何人かいたら、どうすればいいのか分かんなくて、つい壁のシミと化しちゃいます。


たぶん、実はよく見てると、喋ってるのはごく一部なんだよね。だいたい1対1で話してて、周りはなんとなく聞いてるだけだったり。


たぶん、私は話したくてしょうがない人なんだろうな。人の話を聞いても、それについて、自分の考えとかを言いたくなっちゃう。でも、口を挟む隙がなかったりする。突然話しても、何この人?みたいな。


その点、マンツーマンなら、相手の話し相手は私しかいない。互いに聞いて応えて、ラリーが続けば楽しいからね。


えと、ここ、なんの場だっけ?あ、そか、あとがきだったわ。すいませんm(._.)m


こんな感じで作戦会議はお仕舞いです。しばらく動きはないはずで、冬には内戦ってことだねー。争いはイヤだねー。


自分がイヤなことって、書くのもイヤなんだよね。イヤっていうか、うまく書けないっていうか。めっちゃ苦手っていうか、やっぱ、たぶん、そういうもんだよね?


さて、どうしよっかなぁ?とりあえず、冬までは時間もあるし、収穫期も迎えるし…… そっか、そういう感じのも(^〜^)


とりあえず、今週末はこんなもんです。もしよろしければ、また来週お会いしましょう。


今後ともどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


なお、この物語はフィクションでありry ……すべて架空のものです。過去も含め実在する人物や場所、その他の事物とは、ちょっとだけ関係あるかもしれませんが、そのまんまじゃありません。


悪役にしちゃってる人物のリアル推しの人いたら、ごめんね〜♪


あ、「田舎者の『猿』知恵」って、なにがおもしろいのかな?(笑)


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