第8章:ロールレ・フライ
■使い魔の報告
ここはある酒場の地下。
ロールレ・フライはソファに座っている。
そこへ、カラスの姿をした使い魔が戻ってくる。
使い魔は、汗をかく機能はないのに汗をかいて見える
「偉大なる我が主、ロールレ・フライ様にご報告が……」
使い魔は、ロールレ・フライの様子を伺う
体つきは子どものように見える。しかし、その身体は頭部から胸元、肩、腕に至るまで魔結晶に覆われていた。
右腕の先を覆う魔結晶は、鋭利な刃物のような形態になっている。
顔を覆う魔結晶は複眼のような形状をしており、どうしても蠅を連想させた。
ロールレ・フライと呼ばれた者が言う
「……何だ。続けろ」
使い魔は、歯というものを持たないのに、奥歯にものが挟まったように続けた
「実は…兼ねてから進めておりました計画が……遂行でき…ない状態になりまして……」
ロールレ・フライはついに怒りを顕わにする
「はっきり言え!」
使い魔はできないはずの動作なのに背筋を伸ばす
「はい!」
「強大な戦力として目をつけていた双子の計画の件です!」
ロールレは双子の持つ力の強大さに以前から目をつけていた。
工作員を送り込み、人間を先導する
そうして双子を迫害すれば、人間への負の感情を植え付けることができる
そうなれば、いかに何かの力で守られた双子と言えど、ロールレ・フライの能力によってこちらに付く
しかし、その計画は失敗した。
ロールレ・フライは眉をひそめた。
「失敗の理由はなんだ?」
(私が関与していることは誰にも分からないはずだ。なぜ、この計画だけが潰された……?)
使い魔は、なんとか声を絞り出す
「そ、それが……」
「双子の気持ちを善に戻した人間がいるようです!」
ロールレ・フライは黙る。
(その人間は、双子の代わりになるのではないか…)
■ ロールレ・フライの能力
ロールレ・フライは、恐るべき能力を持っていた。
相手の心にある、恐怖・怒り・嫉妬・不安・疑惑などの負の感情に干渉し、干渉された相手は洗脳状態になる。
ただし、何もないところから悪意を生み出す能力ではない。
対象の中にある負の感情を利用する能力。それをまったく持たない者など、物心もつかぬ赤子くらいしかいない。
そうやってロールレは徐々に配下を増やしている。
ただし、ロールレの能力は、多数を一度に洗脳できるわけではない。
ロールレは自分の右腕になれる存在を探していた。
それがあの双子だったのだ。
今はまだせいぜい百数十体の軍団。まだ少ない。
それでも人間どもを恐怖させるには十分だった。
ロールレは忌々し気につぶやく
「あの双子がいれば、人間どもを従わせるのも容易だったものを……」
「待てよ…あの双子を上回る素材ということか…面白い!」
ロールレ・フライは思考の底に落ちていく…
人間は危険だ。
人間をどうにかしなければならない。
そうだ。人間を恐怖で支配することこそが俺の使命だ。
■侵攻開始
ロールレ・フライは、本来なら慎重に準備を進めるつもりだった。
双子を引き入れ、居城を構え、軍団を充実させてから、人間を圧倒的な武力で制圧するつもりだった。
それがロールレの考える恐怖による支配。
しかし、双子の件は失敗し、居城の魔素化の進捗は思わしくない。
だが、身体能力に特化したロールレ・フライの軍勢の前に、それでも人間種はなすすべがないだろう。
戦闘特化の肉食獣。
防御特化の草食獣。
情報を集める手段も鳥類を中心とした使い魔がいる。
完全ではないが、負ける要素もない。
「人間どもに恐怖を与えてやれ」
ロールレ・フライの言葉とともに、魔王軍が動き始める。
待てよ。
ロールレは先ほどの思考を辿る。
「双子を善に戻した人間……は、私が自ら迎えに行こう!」
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そのころ、何もしらない三人はすっかり日常に戻っていた。
マイはいつものように酒場の仕事で忙しく、ナムオはまだまだ猫っぽい。
だが、タクニャは何かの気配を感じてた。
悪霊とかの類ではなさそうだけど、何かがいるような気がする。
部屋の隅あたりをじっと見ながらタクニャは思う。
(そういえばナムも何もないところをじっと見てたな…。俺も猫に近づいてきたのかな?)




