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自堕落に生きると決めた貴族、何故か今日も忙しい ~高級自堕落貴族を目指す~  作者: 鏑右いなだ


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第4話 魔力切れ

 「ねえミットリオ、今日は天気が良いからお外に出ましょうか?」

 

 シトレアの言葉に窓ガラスから外の景色を見ると、最近はすっかり寒くなってきた。

 とゆうのに今日は雲一つ無い晴れの日で、ポカポカな陽光が部屋の中を照らしていた。

 

 暖かそうな外の景色を見たミットリオは、うずうずとした気持ちが芽生えてきて、


「うん、いく」


 と気軽に答えてしまうのだった。


 母親の腕に抱かれミットリオは、使用人のデフィーとシトレアと一緒に玄関から屋敷の外に出た。

 一瞬眩しい太陽の光が顔に掛かり目をつむったが、すぐに使用人のデフィーが日傘を差してくれて、気にならなくなった。


 (何て気の利くメイドさんなんだ……)


 ミットリオはシトレアの腕の中には抱かれながら、見上げているメイドの顔を見て尊敬の念を抱く。

 ミットリオと視線が合うと、メイドのデフィーは軽く微笑んでくれた。

 ミットリオも軽く微笑み返すと、元の外の景色に視線を戻した。

 もう秋も終わりかけの時期だと言うのに、心地良い風と陽光が枯れつつある芝生を照らしていた。

 日陰に行けば肌寒く感じるのだろうが、日が当たっているところにいれば暖かく感じるので問題ないだろう。


「ほら見て、ミットリオ」


 シトレアの指差した方を見ると、そこではアウドールの元でしっかりと稽古に励む、チェルスとシュトラの姿があった。

 今日は魔法の訓練をしているようで、アウドールが二人に魔法を教えていた。


 日によって稽古の教師が違うようで、魔法の訓練はアウドールが担当して剣の稽古はシトレアが受け持っていた。

 こんなにお淑やかなのに、こう見えてシトレアは剣の腕前が物凄いのだそうだ。

 姉であるシュトラが興奮して語っていたのを無理矢理聞かされているから知っている。


 魔法を教えているアウドールも、凄い実力者だそうで両親の凄さを語るシュトラに、強引に付き合わされたのを思い出す。

 勉強やマナーの教育はデフィーが担当しているそうだ。


「わっ!」


 その魔法の稽古で、丁度いまシュトラが初めて魔法を発動させたみたいで、手の平から出した風魔法にびっくりして驚いていた。

 初めてちゃんとした魔法が発動出来た事で、シュトラは嬉しくなってアウドールの足にしがみ付いている。

 それを少し困った様子の笑顔であやしているアウドールの姿が印象的だった。

 チェルスも離れたところで魔法を出しており、シュトラよりは上手く出来ている風魔法を発動させていた。


 (ほえー……)


 チェルスとシュトラ魔法を発動させている様子を見て、ミットリオは心の中で感嘆の声を上げる。


 (ちゃんとした魔法を見るのはこれが初めてだな……、本当に魔法のある世界に来たんだな~……)


 家の中で魔法を使う機会もあっただろうが、ミットリオは殆ど部屋にいるか、ご飯を食べる時に下に降りる位なので、魔法らしい魔法を見たことが殆どなかったのだ。

 見たことがあると言えば、父親のアウドールが本を数冊空中に浮かせて移動している時位か。

 それと早朝、暖炉の火を点けているデフィーの火魔法を一度見たことがあるくらい。


 (いいなぁ~、おれもはやくつかいたいなぁ~)


 ミットリオはうずうずが止められずにいて、シトレアの腕の中でビーンと体を真っ直ぐにして魔法を見詰めていた。

 流石にミットリオを抱く体勢がきつくなってきたシトレアは、ミットリオを枯れつつある低めの芝生の上に降ろしてあげる。


 解放されたミットリオは、うずうずが抑えきれないのか、プリプリのお尻を左右に振りながら、アウドール達が魔法を繰り出す様子を見ていて、その後ろでシトレアとデフィーは、ミットリオの謎のダンスを微笑みながら見守っていた。


 (おおっ! なんだあれはっ!)


 そしてアウドールが小さな竜巻を作って、芝生の上に落ちている枯れ葉を集めて、一箇所に纏めた光景を見ると、ミットリオは目を輝かせて更に興奮した様子を見せるのだった。


 アウドールの指先が光り、魔力が指先に集まったかと思うと、ヒュオッと散らばっていた枯れ葉が、アウドールの竜巻で綺麗に纏まっていく。

 その光景は、今のミットリオの心を躍らせるには十分だった。


 (とうさんはいま、ゆびのさきにまりょくをあつめていたよな)


 ミットリオは、アウドールの指先に魔力が集まっていたのを確認すると、自分の指でも同じ様な事ができないか試してみる。


 …………。

 

 しかしミットリオの指先は特に何も起こらなかった。


 (あれー? おかしいな。もっと集中すればいけるかな?)


 ミットリオは、小さな体を命一杯使って指先に全神経を集中させた。


 そんな様子を後ろで見ていたシトレアは、急にミットリオがうつむき出したことで、魔法から地面の虫に興味が移ったのだと思い、特に気にしていなかった。

 不思議な様子を見せるミットリオだが、こうゆうところはまだ赤ん坊なのかしら、と考えていた。


 (ふぬぬっ……)


 しかしミットリオは、地面の虫なぞに興味を抱いているのではなく、今正に魔法を発動させようと眉間に皺を寄せて、全神経を指先に集中させているのだった。


 (うえっ?)


 そして遂に、指先に少し熱の籠もった感覚が出ると、指先が淡く光って微かな、ほんの微かな風魔法が発動したのだった。


「うわはぁっ!」


 びっくりして声を上げるが指先の風魔法は消えず、シュルルッと指先で微かに風が渦巻いている。


 (出来たっ!)


 人生で初めて魔法がはつどうできた事で、ミットリオはとても嬉しくなり、満面の笑みを浮かべる。

 そこまで行くと後ろのシトレアとデフィーも、ミットリオが何をしてたのかに気付いて、それがとんでもない事だと分かると驚いて目を見開く。


「みてみてっ! かあさんっまほうできたよっ!」


 折角なので見て貰おうと、後ろの二人に自分の指先を見せたのだったが、振り向き指先の魔法をシトレアとデフィーに見せたところで、ミットリオは体の力が抜けて目の前が一気に暗くなる。


 (あえ……?)


 そのままミットリオは顔を青ざめさせると、力なく体をくてっと倒して、くの字に前のめりに芝生の上に倒れるのだった。


「きゃああっっ!! ミットリオッ! ミットリオッッ!!」


 突然息子が意識を無くして倒れた事で、シトレアは悲鳴を上げて、それを離れたところで聞きつけたアウドールも何があったのかと、急いでシトレアのところに駆け付ける。

 三人はグッタリと倒れているミットリオを揺らさないように、ゆっくりと抱き上げると、呼吸をしている事を確認して、ミットリオの容態を確かめるのだった。

 

 幸いアウドールが回復魔法を使えたので、ミットリオの状態を診断して、魔力切れを起こしたと判明すると、三人はひとまず安心するのだった。

 そしてアウドールが、魔力をミットリオに分け与えると、顔色の悪かったミットリオの顔が戻っていき、汗も普通に引いていくのだった。


 ミットリオが倒れたい事で今日の稽古は無くなってしまい、アウドールはミットリオを抱き上げて部屋に戻っていく。


「大丈夫だよシトレア。少しすればミットリオは目を覚ますと思う」


「うん」


「後でミットリオに事情を聞かないとね」


「……ごめんなさい、私が目を離していたから……」


「ずっと見ているのは流石に無理さ……、子供なんだから突拍子もないことをするのは当然だよ。しかしまさか魔法を発動させるとは思わなかったな……」


「……そうね、私も予想外だったわ」


 アウドールとシトレアの二人は、屋敷の階段を登りながらミットリオの行動について会話をする。

 そして部屋に着くと、いつものようにミットリオをベッドの上に寝かせてあげる。


 ベッドに寝かされたミットリオは、二人の心配を余所にとても気持ちの良さそうな寝顔で眠っていた。







 



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