京都・三条大橋 その3
一方、我らがミケタマは。
「ねえ、あれ、何?」
「うーんと、よくわかんないけど、とにかく不吉なものであることは間違いなさそうね」
遠く後ろを見やると、ドドドドドッという大音声とともに、盛大な雪煙が上がっている。
「どうする?」
「答えは一つ」
「関わってらんないわね」
「そうよね」
「エンジン全開!」
「三条大橋まで、一気に行くわよっ!」
ブオン!
ジェットスキーが、火を噴き、一目散に滑っていく。
猛烈な雪煙が、二人の後ろで尾を引いて、真っ白な粉を撒き散らす。
滋賀と京都の間にある、最後の山を一気に越えて、山科の市街地へ。
「あーん、滋賀と京都の県境で写真撮れなかったあ〜っ!」
「悠長なこと言ってる場合じゃないわ。後ろ、迫ってくるわよ!」
ドドドドドドッ!
追いつかれては一大事と、ひたすら逃げる。
コーガ、コーガ、コーガ、コーガ……。
バグコーガ、バグコーガ、バグコーガ……。
「私も霊感が芽生えちゃったのかしら!?耳元でずっとバグコーガって聞こえるの。セミの亡霊に取り憑かれたみたい!」
「亡霊じゃないわよ!さっきのセミの大軍が追いかけてくるわ!え、何ですって!?バグはコーガ!?」
天智天皇陵を過ぎ、一気に蹴上まで駆け上がる。
「あの忍者の集団は、何!?」
「多分、バグよ〜!!」
蹴上まで来れば、もう少し。
東山を過ぎ、三条大橋が見えてきた。
「ミケコさーん!タマコさーん!そら、お前たち、忍者どもを蹴散らせ〜っ!」
「あれもバグなの!?」
「その通り!いつものバグってる一茶さんだわ!」
ゴールまで、あとちょっと。
ほら、弥次喜多像が見えてきた。
現代では、橋の向こう側にある弥次喜多像。
近未来では、ロボット化されて、動く、喋る、踊る。
「おめでとうございま〜す!」
「それ、カッポレ、カッポレ、甘茶でカッポレ!」
「弥次さん喜多さんって、こんな人だったの!?」
「長生きして、新しいキャラクターを見つけたんだわっ」
ドーン、ドーン、ドーン!
さらには、二人の到着を祝福して、三条の河原から花火が打ち上がる。
「もう〜、そっとしといてくれないのーっ!?」
「演出が、いちいち派手なのよね!?」
しかし、まだこれだけでは終わらないのだ。
ワラワラと沸いて出たのは、新撰組ロボットたち。
お揃いの、浅葱色のだんだら羽織にハチマキ、誠の旗印。
二人を迎え入れようと、三条大橋の入り口に、ゴールテープを張った。
そこをサーッと通り抜けた!
「フィニッシュ!」
「やっとゴールよ!」
あ〜っ、と、思わず橋の真ん中でへたり込む二人である。
「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ!」
万歳三唱して、喜ぶ弥次喜多に、新撰組の面々。
「近藤さんに、土方さん。キャラ変わってる!」
「長生きして新しいキャラを見つけたんだわっ!」
しかし、ゴール達成の余韻に浸っている余裕はなかった。
ミケタマのすぐ後ろを追いかけてきた、悲しい男たち。
「バグ、コーガ、バグ、コーガ……」
「白状せいっ、忍法・二人羽織!」
「させるかっ、忍法・外来魚の舞!」
「伊賀忍者よ、こやつらをやっつけろ!ミケコさーん、タマコさーん!」
「坊っちゃーん!」
ドドドドドドドドドドドド……!!
セミ、ウスオ、ユラ、甲賀忍者、伊賀忍者、一茶、鱒之助に金のシャチホコ。
もはや組んずほぐれつの大乱闘。
団子状態で橋に飛び込んできたから、たまらない。
狭い橋の入り口で、ぎゅうぎゅう詰めになってしまった。
「おわー」
「おわー」
逃げ惑う、弥次喜多ロボット。
「敵襲であるぞ〜!」
勘違いした新撰組ロボットたちと、忍者軍団との戦いが始まってしまった。
そんなときでも、一人冷静な近藤勇ロボット。
「騒がしいのう。今宵の虎徹は、血に飢えて……、な、なんだあ〜っ!?」
鴨川から一斉に、ブラックバスやブルーギルが飛び上がってきて、彼もパニックに陥ってしまった。
「こ、こらっ、金のシャチホコたちよ!どこへ行こうとするのだ!?おわ〜!!」
「坊っちゃーん!」
そしてあっさり、二度目の忍法・外来魚の舞にかかってしまう、金のシャチホコ二体。
一茶と鱒之助を背に乗せたまま、ドボンと、鴨川に飛び込んだ。
ついでに、鴨川の河川敷で、観光客が呑気にパンでも食べようかと油断していると、必ず空から舞い降りてきて、パンを奪っていく、トンビたちも降りてきた。
「うわあ……。もう、ハチャメチャ」
「ねえ、ミケ。のんびりしていちゃいられないんじゃない?」
「そうよね」
「あれを、取り替えないとね」




