京都・三条大橋 その4
二人は、唯一、擬宝珠が古いままに残されていた、橋の欄干に近づいた。
「これこれ。新撰組の刀傷が残っているわ」
ミケコが古い擬宝珠に手をかけて、キュルキュルと回すと、それは簡単に外れた。
「これを、リュックサックに入れて持ってきた、新しいのに変えればいいのね」
新しい擬宝珠を取り出し、それをまじまじと眺めた。
「こっちにも刀傷はついてるけど、これはフェイクなのよね」
二人はしばらく顔を見合わせていた。
「古いままじゃあ、ねえ」とタマコ。
「そうよねえ」とミケコ。
擬宝珠を欄干にセット。
キュルキュルと今度は反対に回して、しっかりと締めた。
乱闘の最中、それを目撃した、ウスオとユラの二人の忍者。
「あ、間に合わなかったか!」とウスオは唇を噛んだ。
「くはははは。これで我が任務は完了なり!」ユラは高笑いである。
が、そこに油断が生じた。
「隙あり、忍法・二人羽織!」
「くわっ!」
ユラにウスオの術がかかった。
フラフラと操り人形のように、タマコの前にまろび出るユラ。
その背中には、ウスオが影のように張り付いている。
持ち前の影の薄さとあいまって、決して誰かに操られているなどとは見破られない、ウスオの必殺技だ。
「あら、忍者の人。何か御用かしら?」と、タマコは言った。
己の意に反して、ユラの口が動いてしまう。
「タマコさん!そ、その擬宝珠を、早くお取りください!それは、弥次喜多グループを陥れんとした、十返舎開発の陰謀なのです。私は、十返舎開発に雇われて、風魔忍者の仕業に見せかけ、バグが起きているように見せかけていた、甲賀忍……」
「ストップ!」と、タマコがユラを遮った。「そんなこと、とっくに知っているわよ、日影ウスオさん」
「え……!?」
ウスオは耳を疑った。
人の口から自分の名前が出るのを聞いたのは、いつぶりのことか。
ドサッと、操っていたユラを落としてしまった。
「日影ウスオさんでしょう。私たちの同期の」と、再びタマコの口からウスオの名前が出た。
「は、はい……」
「これを書いたのも、あなたね」と、タマコはポケットから一枚の紙を取り出した。
「それは……、ご覧になっていただけたのですか」
「横田の大常夜灯のところに挟まっていたのを、読ませてもらったわ。十返舎開発の陰謀と、甲賀忍者の暗躍について教えてくれてありがとう。これ、ウスオさんの字よね?」
「ど、どうして、僕のことを知っているのですか?」
「私たち、知ってるわよ。だって、同期じゃない。それに、あなたがなんの仕事をしているかわからないけど、大体いつも私たちと同じフロアにいるわよね」
ウスオの顔がカーッと真っ赤になった。
まさか、知られていたとは……!
しかも、憧れの人に、思いを寄せるミケタマに……。
ウスオはぼーっとしてきて、気絶してしまった。




