石部 その2
「これだけ金の像にしてもらえるとなると、やっぱり一茶さんかしら?」
「違うんじゃないの?彼はこんな真面目そうなタイプじゃないもの」
「それもそうよね。この人は、女になんかうつつを抜かしそうにないわ」
「そうよ、そうよ」
どこかで一茶が、盛大にくしゃみをする音が聞こえてきそうだ。
ミケタマが思い出せないのも、無理はない。
「あ、名前が書いてあったわ」
「どれどれ。石部金吉?」
「石部っていうことは、やっぱりこの辺の名士か誰かかしら?」
「昔、そういう政治家がいたのじゃないかしら」
完全に誤解であるので、やはり作者が説明する。
石部金吉とは、ものすごく生真面目すぎて、頭の硬い人を言う、四文字熟語だ。
人の名前ではない。
特に金銭欲や女色に惑わされない堅物を指して使うので、ミケタマに惑わされまくっている一茶のような人物とは、似ても似つかない。
ここでは、それを擬人化して、人物像にしてあった。
ちなみに、ミケタマが心配したように、これは本物の金ではない。
像もゲレンデも、金色のカラーリングをしているだけである。
ここ石部宿は、『京立ち石部泊まり』と言われ、京からたった旅人が、最初に泊まる場所として栄えた。
石部金山があり、奈良時代の昔から、鉱物を掘っていたところ。
それにちなんで、石部宿一帯を金色にカラーリングしているのであった。
石部金吉だけでなく、様々な人物像があった。
「あ、これは弥次喜多グループ初代社長」
「こっちは、二代目ね」
「歴代社長の像がみんなあるわ」
「一茶さんの像は、まだないわね。彼も社長になったら、ここに像が建てられるのかしら?」
「あの人って、何代目になるの?」
「1、2、3……、数えて七代目だわ」
「初代社長って、何か呪われるようなことしたのかしらね?」
「七代祟るっていうものね」
それより、一茶自身の性質によるものが大きいと思うが、キンキラキンの中を滑っていくと、やがて石部の本陣へ。
茶店が賑わっているようであった。
「ここでお昼にしましょうか」
「そうね」
二人も茶店に入っていく。
中は、これまたキンキラキン。
床も壁も天井も、机も椅子も全てが金色にカラーリングされていた。
だが、全く浮ついた雰囲気を感じさせない。
「何だろう。従業員の方たちが、みんな真面目そう」
「本当ね。まるでさっきの像の人みたい」
さすがは石部の金吉である。
「この辺の名物は……っと、トコロテンなんだ!」
「ここに来る途中の夏見の里というところの、名物だったんですって!」
他に、名物の豆腐田楽に、いもつぶしをいただいた。
いもつぶしとは、この辺りの郷土料理。
元々は、年貢にならないくず米と里芋を混ぜて潰したものを、おにぎりのように固めて焼いて、味噌などで味付けをしたものだ。
それはどれも大変においしかったのだが。
「うう、食器もキンキラキンなのね」
「ねえ、私の口の中、キンキラキンになってない?」
そろそろ落ち着いた景色が見たいと店を出た。
金山の跡を横目に見ながら、次の草津に向かうのであった。




