宮 その7
急に浮き足立つ、伊賀忍者軍団。
空を見上げて、騒めいていた。
いかに任務遂行のために、感情をコントロールする術を身につけている彼らであっても、この事態は予想していなかった。
そんな彼らを、天守閣の屋根から飛び立った、二匹のシャチホコが襲う。
カッと口を大きく開いたかと思うと、勢いよく水が放たれた。
ビュオオオ……!!
「おわー」
「ぐわー」
水圧で弾き飛ばれて、屋根から転がり落ちていく伊賀忍者たち。
一網打尽だ。
シャチホコが城に飾られるようになった由来は、火災が起きたときに、口から水を出して消火してくれるという言い伝えから。
伝説は本物だったようだ。
「そうか……、そういえば、アレも外来魚であったな」
とは、物陰から戦況を見つめるユラである。
術が効くか半信半疑であったが、思った以上の結果をもたらしてくれた。
「それより、この後どうなるんだ?」と、ウスオが聞いた。
「外来魚は、元いた場所に帰る」とユラは答えた。
彼らが見つめる視線の先で、二匹の金のシャチホコは、ゆっくりと飛翔を続け、やがて堀川に着水した。
そのまま川の流れに任せて、海へと下っていく。
「あ!ど、どこへ行くんだ、金のシャチホコ〜っ!!」
と、天守閣の一茶は、慌てふためいていた。
慌てて下に降りて行こうとする。
「お、お、お二人は、ど、どうか、このまま、お楽しみください!良い旅を〜っ!!」
血相を変えて、レストランから出ていった。
「あ、待ってください、坊っちゃん〜!?」
鱒之助もついて出ていく。
「あの二匹だけで、いくらかかったと思っているんだ〜っ!!」
と、遠くで何やら喚いている声が聞こえた。
「あらあら、一茶さんも大変ね」とミケコ。
「自業自得って言葉が、似合いそうな気もするけどね」とタマコ。
「一茶さんもああ言っていたことだし、私たちの部屋で飲み直さない?」
「そうね。あ、ボーイさん。残った手羽先を部屋に運んでくださらない?」
「厨房にある分も全部」
「それとお酒も」
「厨房にある分も全部ね」
「まあ、飲み過ぎだわ」
一方、城の外では。
「許したわけではないが、今回ばかりは礼を言う」と、ウスオが言った。
「何、お主の機転がなければ、拙者もやられておったわ」と、ユラは答えた。
二人の忍者は、多くは語らず、サッと分かれて、闇に消えた。
辺りには、再び静寂が訪れ、この人の叫び声が響いた。
「のわ〜っ!待ってくれ、金のシャチホコ〜っ!!!」一茶は一匹のシャチホコの背に飛びついた。「爺よ、そちらを頼む!」
もう片方の背に、鱒之助が飛び乗る。
「坊っちゃん、これはどこに行こうとしているのでしょう!?」
「そんなこと、僕が知るか〜!!??」
だが、背中の二人には関係なく、金のシャチホコは、悠々と太平洋に出ていくのであった……。




