宮 その6
一方、天守閣では。
「十返舎開発め。今までさんざん邪魔してくれたが、今夜が年貢の納めどきだぞ。お前たちの企みは、今ここで、この弥次喜多一茶が、完全に挫いてみせる!」
と、一茶が怪気炎を上げていた。
「フフフフフ、彼らは徳川家のお庭番、伊賀忍者です。相手が忍者で来るなら、こちらも忍者でもって対処する。風魔忍者よ、もうお前たちの好きにはさせないぞ!」
「さすがは坊っちゃん。抜かりない!」
と鱒之助はヨイショするが、弥次喜多グループが名古屋城を手に入れたときに、一緒に伊賀忍者軍団もついてきたというのが真相である。
彼らは江戸時代の昔から、ずっと名古屋城を守ってきているのであった。
「本当に大丈夫かしらねえ?」
とミケコが窓の外に目を凝らすと、時折、暗闇の中で何者かが高速で動いているらしかった。
シャキーン!
シャキーン!
刀を斬り合わせる音がする。
闇の中で火花が弾けて、そして散った。
タタタタタッ!
屋根の上を走る音。
「うわ、すごい。よくは見えないけど、きっと忍者同士の戦闘が行われているのね」
「私たち、こんなところにいて、本当に大丈夫ですか?」
とタマコは心配して、残ったお酒のボトルをかき集めた。
「大丈夫です、ご安心ください。彼らは、徳川の時代からこの城を守ってきた、いわば名古屋城のスペシャリスト。城には一つの傷もつけることなく、見事にくせ者を捕えて見せるでしょう!」
一茶の自信に根拠はないが、しかしさすがに伊賀忍者軍団である。
徐々にウスオとユラは追い詰められていった。
「おい、風魔忍者!」と、屋根の上でユラはウスオを呼んだ。
「何だ、甲賀忍者」と、側に寄るウスオ。
お互いに名前を知らないと、こういうとき不便である。
「このままでは、埒が明かない。アレを使え!」
「アレとは、何だ?」
「大井川で使っただろう。風魔を召喚しろ!」
「あれは、著しく力を消費する。今度、呼べるのは半年後だ!」
「何だと、頼りない」
「お主こそ、アレを使わないか、外来魚」
ウスオは眼下に見える、池を指差した。
「無理だな。この城の池には、錦鯉しか生息しておらぬ」
「じゃあ、アレはどうだ?」
と、ウスオは今度は、屋根の上を指差した。
一方、天守閣では。
「どうだ、風魔忍者め!我が最強の伊賀忍者軍団の前では、お前たちなぞ袋のネズミだ!」
「そうだ、そうだ!弥次喜多グループの力、思い知ったか!」
一茶と鱒之助が息巻いていた。
「ミケコさん、タマコさん。お騒がせしましたが、もうそろそろ戦闘も終わるでしょう。見苦しいものをお見せしました。お詫びに僕の部屋で飲み直ししませんか?ちなみに僕が泊まっているのは、最高級デラックス将軍スイート・金シャチタイプRXです」
しかし、ミケタマの二人は、困惑した表情で窓の外を眺めていた。RXの意味がわからなかったからではない。
「一茶さん、あれは何でしょう?」
「金のシャチホコが空を飛んでいるように見えますけど?」
「うん、金のシャチホコ?」と、一茶たちも窓の外を見た。
二人ともあんぐりと顎が床に着くくらい、驚愕した。
「な、な、な、な、何だあ〜っ!?」
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、坊っちゃん〜!?」
何と、名古屋城のシンボル、金のシャチホコが、本当に空を飛んでいた。




