宮 その5
「こんなところに、居着いてもらっては、困るからな」
多羅尾ユラは、城に向けて、大砲を発射していた。
完全に城を壊すつもりはない。
もっとも、ユラの大砲ぐらいでは、名古屋城はビクともしないであろうが、少し騒動を起こして、ミケタマに旅を続けてもらう。
そういう魂胆である。
「よし、このくらいでいいだろう」
と、ユラが引き上げようとしたときである。
「むっ」
殺気を感じて、飛び退く。
さっきまで彼がいた場所には、もうすっかりお馴染みになった十字手裏剣が。
サッと、お返しの棒手裏剣を放つ、ユラ。
ドスッと、ターゲットの後ろの木に当たった。
スラリと刀が鞘走る音が、同時に聞こえた。
ここに、三度刃を交える、両雄である。
「また、お主か。仕事熱心なことだ」
「こちらのセリフだ」
甲賀忍者・多羅尾ユラ。
風魔忍者・日影ウスオ。
忍者にとっては、瞬きするほどの距離に詰めて、お互いに向かい合った。
「主君を守ろうとするその心掛け、あっぱれである。敵ながら褒めてつかわすぞ。だが、心配するな。城が壊れるまで撃ちはせん」
「主君?」
「弥次喜多グループの坊やがいるだろう」
「あんな奴は、主君ではない」
意外な回答に、戸惑うユラ。
「お主は、弥次喜多グループに雇われている風魔忍者ではないのか?」
「雇われているといえば、雇われているが、それほど深い関係ではない」
ウスオは一応、弥次喜多グループの正社員である。
給料はもらっている。
だが、一度も仕事をしたことがないから、微妙なところである。
「よく分からんが。そういえば、まだお主の名を聞いていなかったな」と、ユラ。「冥土の土産に置いていくがよい」
「破れ去るものに、語る名など、持ち合わせてはおらぬ」ウスオが答えた。
「ならば、名無しのまま、朽ち果てよ」
「我が趣味の邪魔をする奴は、許してはおけぬ」
「趣味?」と、ユラには理解の出来ない領域だった。
「問答無用!」
電光石火の速さで、ウスオが斬りかかる。
ジャキーン!
ユラが刀で受け止めた、そのとき。
シュパパ、パ!
「むうっ」
「何だ!?」
刀を切り合わせたままの姿勢で、飛び退いた二人。
さっきまで二人がいた場所には、手裏剣が刺さっていた。
ヒュン、ヒュン!
二人を追撃が襲う。
同時に避けて、いったん物陰に隠れた。
「援軍とは、卑怯なり」
「こちらのセリフだ!」
多羅尾ユラは、一人で仕事をしている。
ウスオは、援軍を頼もうにも、友達がいない。
「じゃあ、あれは何だ?」
と、ユラはあれを指差した。
無表情な殺戮マシーンの集団が、ウスオとユラを取り囲んでいた。
全員、忍者装束に身を包み、鎖鎌や鉤縄、忍刀などで武装している。
中には、火縄銃を構えているものまでいた。
「お主の味方ではないのか?」とウスオ。
「知らぬな」とユラ。
一瞬のうちに状況を察知した、二人の忍者が飛び退ったのと、謎の忍者軍団が、二人に襲いかかったのは、ほとんど同時であった。




